ヨーロッパ読書メモ

パリ解放 1944-49 第4部 新たな秩序

第30章 パリのアメリカ人 40年代末にパリでもっとも目についたアメリカ人は、外交官、軍人、そしてマーシャルプランの実働部隊だった。 第31章 観光客の襲来 若きアメリカ人が自由を渇望している一方、より厳格な同国人は衝撃と非難とを表明した。1948年夏、…

パリ解放 1944-49 第3部 冷戦突入

第19章 影絵芝居 計略と逆計 ドゴール辞任でいちばん迷惑をこうむった機関は将校団だった。 1946年春に深い不安感の漂う時期であり、右翼活動の盛り上がりを見た時期でもあった。 第20章 政治と文学 1946年5月5日の国民投票 第四共和制の憲法草案は、ほとん…

パリ解放 1944-49 第2部 国家、それはドゴールなり

第9章 臨時政府 ドゴールの臨時政府と共産党の争い 共産党指導者は、ドゴールはフランスのケレンスキーであり、トレーズは権力に復帰しようとしている自分たちのレーニンであると確信していた。 第10章 外交団 パリに集まった外交団は快楽主義者と厳格主義者…

パリ解放 1944-49 第1部

パリ解放 1944-49 アントニー・ビーヴァー アーテミス・クーパー著 北代美和子 訳 2012年9月10日 発行 白水社 発行 当時のパリなどの情勢を詳しく伝えています。ドゴールやペタンなどの政治家だけでなく、サルトルなどの文化人、そしてピカソのような芸術家…

フランス文化55のキーワード

世界文化シリーズ2 フランス文化55のキーワード 朝比奈美知子・横山安由美 編著 2011年4月30日 初版第1刷発行 ミネルヴァ書房 発行 フランス文化の55のキーワードを、歴史・フランス的精神・芸術・生活・現代社会・パリ・さまざまな地方、の七つの章に分…

麦酒伝来 森鴎外とドイツビール

麦酒伝来 森鴎外とドイツビール 村上満 著 中央公論新社 発行 2017年11月25日 初版発行 明治の頃の、日本のビール事情について書かれています。 副題では、森鴎外とドイツビールとなっていますが、鴎外以外の同時代人のエピソードも豊富に語られています。 …

新版 福翁自伝 角川ソフィア文庫

新版 福翁自伝 福沢諭吉 昆野和七 校訂 角川文庫 15298 平成21年11月15日 三版発行 先日読んで、このブログでも紹介した「パリの福澤諭吉 謎の肖像写真をたずねて」に触発されて、この福翁自伝を読んでみました。 独特の語り口による、痛快な自伝で、たいへ…

アウグスティヌス 「心」の哲学者 岩波新書

アウグスティヌス 「心」の哲学者 出村和彦 著 2017年10月20日 第1刷発行 岩波新書 1682 古代末期ローマ帝国の地中海世界に生きたアウグスティヌス(354-430) 西欧最大のキリスト教思想家、特に神の恩恵を絶対視する原罪論や、予定説という強力な神学を打ち…

本棚の歴史

本棚の歴史(新装復刊) ヘンリー・ペトロスキー 著 池田栄一 訳 2017年5月25日 発行 白水社 発行 主に欧州の本棚の歴史について詳しく述べられています。 もちろん本棚は本の形態により変化していくものなので、本と本棚の共進化の過程をたどっています。 古…

生野銀山と銀の馬車道

生野銀山と銀の馬車道 清原幹雄 著 2011年5月20日 初版第1刷発行 神戸新聞総合出版センター 発行 明治の初めに生野鉱山から姫路の飾磨津まで、物資輸送専用の道路が建設されました。 今では「銀の馬車道」という愛称で親しまれています。 その成り立ちや歴史…

消えた国 追われた人々 東プロシアの旅 後半

消えた国 追われた人々 東プロシアの旅 後半より カリーニングラードはロシアの最も西の町である。1946年に誕生。前年までは「ケーニヒスベルク」といって、ドイツの最も東の町だった。1255年の誕生。 リトアニアのビリニュスよりカリーニングラードまで340…

消えた国 追われた人々 東プロシアの旅  前半

消えた国 追われた人々 東プロシアの旅 池内 紀 著 みすず書房 2013年5月10日 発行 いわゆる東プロシアと呼ばれた国の都市やその周辺の、2002年から2008年にかけての紀行記です。 日本ではほとんど知られていない地域の歴史をさかのぼる、極めて興味深い旅行…

パリの福澤諭吉 謎の肖像写真をたずねて

パリの福澤諭吉 謎の肖像写真をたずねて 山口昌子 著 2016年11月25日 初版発行 中央公論新社 発行 福澤諭吉の肖像写真の撮影事情を中心に、彼の文久遣欧使節団の一員としてのパリでの日々を詳しく追っています。 文久遣欧使節団はヨーロッパ諸国と締結した「…

柳田国男と梅棹忠夫 自前の学問を求めて

柳田国男と梅棹忠夫 自前の学問を求めて 伊藤幹治 著 2011年5月13日 第1刷発行 岩波書店 柳田国男の晩年の九年間、柳田のもと國學院大學大学院で研究生活を送り、国立民族学博物館で14年間、梅棹忠夫と接した著者による、エピソードを交えた柳田・梅棹論で…

フレンチ・トーストをフランス語では?

NHKラジオフランス語講座L67より いかにもフランスの食べ物らしい名前のフレンチ・トースト。 フランス語ではpain perduと呼ばれるそうです。 直訳すると失ったパン、あるいは欠けたパンとかになるのでしょうか? 少し変に感じるのですが、その由来をテキ…

フランス現代史 隠された記憶 第二部 第二次世界大戦

第四章 ユダヤ人移送の十字架 背負い続ける罪 パリ北郊のドランシー市にあった収容所。ドイツ占領下のフランス政府は国内のユダヤ人をここに集め、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所などに鉄道で送り込んだ。 第五章 「ヴィシー政権」 対独協力の記憶 人…

フランス現代史 隠された記憶 第一部 第一次世界大戦

フランス現代史 隠された記憶 戦争のタブーを追跡する 宮川裕章 著 2017年9月10日 第一刷発行 ちくま新書 1278 フランスの第一次、第二次大戦に伴う様々なタブーについて、現代でも関わっている人たちの証言をもとに構成されています。ジャーナリストらしい…

海と日本人の歴史

海と日本人の歴史 高橋千劔破 著 2012年3月30日 初版発行 河出書房新社 発行 古代から中世へ 江戸時代の海運と海の男 幕末の漂流と開国と海軍 近代海軍の軍人たち の4章に分けて、海と関わってきた日本人を描いています。 現代よりはるかに危険だった海に、…

エラスムス=トマス・モア 往復書簡

エラスムス=トマス・モア 往復書簡 沓掛良彦・高田康成 訳 2015年6月16日 第1刷発行 岩波文庫 青612-3 1499年から1533年までの、エラスムスとトマス・モアの間に交わされた現存する書簡五十通の日本語訳です。 一司祭の私生児としてロッテルダムで生まれたエ…

エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦

エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 梨木香歩 著 平成28年6月1日 発行 新潮文庫 エストニアはフィンランドのヘルシンキから船で渡って、タリンの街だけ日帰りで訪問した思い出があります。 本屋でこの本を見かけたとき、その時の記憶が甦ってきて…

ランボー作、堀口大學訳の「居酒屋みどり」で、を考える(その3)

― こいつ接吻くらいではビクともしない剛の者! ― にこにこしながら、註文のトーストと冷えかけのハムとを載せた はでな絵皿を運んで来た、 刺すような大蒜の匂いまでする桃色と白のハム それさえあるに念入りに、彼女はビールまで注いだ、 大ジョッキ、夕日…

ランボー作、堀口大學訳の「居酒屋みどり」で、を考える(その2)

久々で僕は楽々、両脚を、テーブルの下にのばしたり、 壁紙の暢気な模様を眺めたり。 そこへあの、目もと涼しく乳房(おっぱい)のやけにでっかい別嬪が 出て来たのだからすばらしい、 Bienheureux, j'allongeai les jambes sous la table Verte : je contem…

ランボー作、堀口大學訳の「居酒屋みどり」で、を考える(その1)

『居酒屋みどり』で 夕方の五時 八日この方、石ころ道を、歩きつづけた僕の靴 すっかり破れてしまってた。シャルルロワへといま着いた。 『居酒屋みどり』で僕はまず トーストとハムを頼んだ、ハムはどうやら冷えていた。 Au Cabaret-vert cinq heures du so…

ランボーの「居酒屋みどり」で、の背景

アルチュール・ランボーは1870年10月7日、シャルルヴィルを出奔し、フュメまで列車で行き、ヴィルーからジヴェを通って、シャルルロワに乗り込んでジャーナリストになるという計画をたてた。 シャルルロワのコレージュ通り20番地にある町の新聞社では、ジュ…

イタリア日記(1811) スタンダール著

イタリア日記(1811) スタンダール 著 臼田紘 訳 新評論 発行 2016年5月20日 初版第1刷発行 前回、ゲーテのイタリア紀行関連本を取り上げましたが、今回はスタンダールによるイタリア日記です。 これは彼が28歳のときの観光旅行をもとに書かれています。 パ…

ゲーテ「イタリア紀行」を旅する

ゲーテ「イタリア紀行」を旅する 牧野宣彦 著 集英社新書ヴィジュアル版 2008年2月20日 第1刷発行 「イタリア紀行」は、ゲーテの訪れた場所の写真が無いと読むのが難しい、と実感したのが本書を書こうとした動機とのこと ゲーテがワイマール公国の重要官僚と…

嘘だらけの日仏近現代史

嘘だらけの日仏近現代史 倉山満 著 扶桑社 2017年3月1日 初版第1刷発行 戦争で何度も負け、常に苦しい戦いを強いられているフランス その時点では決して外交上手とはいえないが、それでも常に根性で乗り越えている。 そして最後は必ず勝者の側にいる…

ラテン語の世界 第7章 黄金時代の文学者~

第7章 黄金時代の文学者 ラテン語散文に少なからぬ寄与をした二人の非専門的文学者 弁論家、哲学者、政治家であったキケロ 軍人、政治家であったカエサル ウェルギリウスの牧歌の第4歌 「近いある日、一人の赤子が産まれ、その子が大きくなると世界が黄金…

フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか

フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか 交通・商業・都市政策を読み解く ヴァンソン藤井由美・宇都宮浄人 著 学芸出版社 2017年2月20日 第1版第2刷発行 フランスで人口が50万人にも満たない地方都市群で土曜日の人の賑わいはどうして起こ…

巴里籠城日誌(巻の六~)

1871年1月21日 パリ籠城後、市内と仏国諸地方との書簡の往来には、全て例の伝書鳩を使っている。そこで、独軍がこれを妨げようと、パリ城周囲の林の中に多くの鷹や鷲を放す。 1871年1月25日(籠城今日既に130日である) 近代歴史の中で約300万人の住民を…