新版 福翁自伝 角川ソフィア文庫

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 新版 福翁自伝
福沢諭吉
昆野和七 校訂
角川文庫 15298
平成21年11月15日 三版発行


先日読んで、このブログでも紹介した「パリの福澤諭吉 謎の肖像写真をたずねて」に触発されて、この福翁自伝を読んでみました。
独特の語り口による、痛快な自伝で、たいへん楽しく読むことが出来ました。
子供の頃のエピソードで、神様の名のあるお札を踏んだり、稲荷様にイタズラしたりするのがありましたが、その頃から合理主義的な思想が芽生えていたようです。
その後大坂で緒方洪庵のもとで蘭学を勉強します。この時の様々な武勇伝には驚かされます。その一方、勉強もよくしていました。布団を敷いて枕をして寝るなんてことはなく、昼夜の区別なく書を読んでいたようです。そのモチベーションはどこから来るのかといえば、西洋日新の書を読むことは日本国じゅうの人にできないことだp112、という気持ちが強かったようです。

さらには緒方洪庵の偉大さもあったのかもしれませんが。
横浜に行った時に英語の必要性を感じます。一時落胆しますが、オランダ語の知識が英語学習にも役立つことがわかった諭吉さんなのでした。
その後アメリカやヨーロッパにを訪問します。当時としては命懸けのことだったのですが、それでも平気で振る舞っているところが凄いですね。
そんな諭吉さんでも攘夷の嵐吹き荒れる時は怖かったようです。暗殺への恐れをしきりに書いており、実際に未遂事件も有りました。それでも生き残ることが出来たのは、運の良さもあったのでしょうが、日頃から用心深く行動していたのもよかったようです。
最後の解説によると、この自伝はアメリカ人のベンジャミン・フランクリンの自伝の影響があるのではないかとのことです。
そもそも自伝という物は、多かれ少なかれ本人に都合よく書かれるものですが、それでも、福沢諭吉さんが一身の独立のため、いかに闘ってきたか一貫して述べられているため、この自伝を更に面白くしています。