麦酒伝来 森鴎外とドイツビール

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麦酒伝来 
森鴎外とドイツビール
村上満 著
中央公論新社 発行
2017年11月25日 初版発行

明治の頃の、日本のビール事情について書かれています。
副題では、森鴎外とドイツビールとなっていますが、鴎外以外の同時代人のエピソードも豊富に語られています。

鴎外よりクラウゼヴィッツの「戦争論」の講義を受けた早川(田村)怡与造
難解な「戦争論」の内容を理解できる頭脳の持ち主は、鴎外を除いて陸軍には田村しかいなかった。
戦争論」は近代戦争の理念・哲学を創始し提起した。戦争という暴力行為を冷徹な思索で意味づけた。
一方、「戦争論」は「悪の書」という批判もある。

バイエルンのビール史に「ビール戦争」という項目がある。
1844年、ビールの値段が上がったことが引き金となり、ミュンヘンの飲ん兵衛たちは落花狼藉の限りを尽くす。
それが1910年まで66年間続いたビール戦争の始まりだった。

夏目漱石は酒を飲んではいけない体質の人ではなかったのでは?
吾輩は猫である」の苦沙弥先生、坊ちゃんも酒の飲めない甘党だった。

鴎外は四十歳で再婚するまで十二年間独身だった。
この間に「児玉せき」なる女性がおり、鴎外の身の回りの世話をしていた。
せきは、「雁」のヒロイン「お玉」もモデルと言われている。

鴎外の「独逸日記」には「舞姫」のエリスのモデルとなったエリーゼに関する記載は全くない。
そして晩年に鴎外は庭で妻が見ている前で、秘匿していたエリーゼに関する文書一切とその他の物品を全て焼却する。
鴎外がベルリンで三回下宿を替わっている。明治21年4月1日から帰国まで住んだ第三の下宿は「室内装飾は頗る美しく、出窓の下は花で飾られ」と洒落た下宿で男寡の部屋とはおもえない。
ここがエリーゼとの蜜月の期間ではなかったのか。

乃木希典プロシア・ドイツ陸軍で習った「ビールの一気飲み」を師団の将校連を集めて行っていた。
これがビールの一気飲みのルーツであると思われる。
ただモンゴル系の人は10%の人は酵素の活性が欠損しており、ビール大瓶一本で極めて危険な状態になる。
著者は学生に「一気飲み」は絶対に禁止すべきだと、大声をあげて警告している。