ランボー作、堀口大學訳の「居酒屋みどり」で、を考える(その3)

― こいつ接吻くらいではビクともしない剛の者! ―
にこにこしながら、註文のトーストと冷えかけのハムとを載せた
はでな絵皿を運んで来た、

刺すような大蒜の匂いまでする桃色と白のハム
それさえあるに念入りに、彼女はビールまで注いだ、
大ジョッキ、夕日を受けて金色に泡の立つこと。

- Celle-là, ce n'est pas un baiser qui l'épeure ! -
Rieuse, m'apporta des tartines de beurre,
Du jambon tiède, dans un plat colorié,

Du jambon rose et blanc parfumé d'une gousse
D'ail, - et m'emplit la chope immense, avec sa mousse
Que dorait un rayon de soleil arriéré.
  
 

最後の6行、épeureとbeurre、そしてgousseとmousseも韻をふんでいます。
更にはcoloriéとarriéréも韻を踏んでいるようです。
une gousse d'ailは「ニンニクひとかけら」との意味、そしてla chope immenseで「巨大なジョッキ」、そしてun rayon de soleilで「日光」となります。
名前だけでなく、テーブルまで全て緑の居酒屋だったのですが、後半部で
coloriéやrose,dorait(金色に輝く),などカラフルになってきます。
その鮮やかな変容が、この詩の一番の魅力と言えそうです。
たいへんわかりやすい開放感を味わうことが出来ますね。