フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか
交通・商業・都市政策を読み解く
ヴァンソン藤井由美・宇都宮浄人 著
2017年2月20日 第1版第2刷発行
フランスで人口が50万人にも満たない地方都市群で土曜日の人の賑わいはどうして起こるのか?
それは「歩いて楽しいまちづくり」が出来ているからだ。幼児連れでも車を気にせずにゆっくりとショッピングやお茶を楽しめる歩行者専用空間が、どの中小都市にも当たり前のように整備されている。
アンジェ市は、週刊誌「エクスプレス」が毎年行っている都市のランキング調査で、2014年も「住みやすいまち」の1位になった。
またナント・レンヌ・ストラスブール・メッス・ナンシー各市が例年上位に入っている。
この5項目のパラメーターはモビリティ・環境・経済・健康・社会政策である。
しかし現在ではどの商店街もLRT導入に積極的だ。パーキングチケットを気にすることなく買い物の後にお茶や食事や映画もという行動に繋がる。
そして商店主には「収益減少額の補填」という対策を採った。
公共交通事業のにおいて、運賃をより高めに設定すれば事業の採算性は向上するが、不足分は自治体からの補填と交通税で賄っている。都市公共交通は、、水や電気と同じく、市民に供給する公益性の高い基本的な社会サービスと位置づけ、都市交通への税金の投与に対する反対意見は聞かない。
シャッター通りを存在させない仕組み
①空き店舗への課税
②自治体の商店舗の専買権
③自治体が発行する建築許可と新規商店に要求する基準
フランスでは地方公務員資格試験に合格すると地方公共団体間の移動が可能で、複数の業務を経験しながら行政官もキャリアアップできる。
フランスでは国が社会保険の負担金徴収・分配を一元化しており、自治体が医療費予算を組む必要が無く、交通や経済政策は都市圏共同体の予算で整備・管理している。だから最小行政単位の自治体であるコミューンは文化にかなりの予算をつぎ込める。
フランスと日本の差異を一言でいえば、現在のフランス人は、自分たちの町のヴィジョンとその基礎となる哲学をはっきり持っているということではないだろうか。
その哲学とは、過度に自家用車に依存した都市から、中心市街地を「歩いて暮らせるまち」に変え、郊外部の自家用車利用との棲み分けと共存を図る多様な選択肢も確保しようというものである。