
北への扉 ヘルシンキ
伊奈英次 写真
小原誠之 文
萩原誠 構成・装幀
プチグラパブリッシング 発行
2011年7月5日 第1刷発行
この本は、ヘルシンキを拠点として訪れたフィンランド各地の旅、そしてエストニア、ラトヴィア、ノルウェーの旅の様子を、フィンランド航空日本語版機内誌『KIITOS』各号の掲載記事を再構成してまとめたものです。
綺麗な写真も豊富です。
初めての夏、初めての冬
シベリウスの時間…ハメーンリンナ−タンペレ (フィンランド)
フィンランド湖水地方西部の航路、シルヴァーライン・クルーズは、中世の古城ハメ城で知られるハメーンリンナと、フィンランド第3の都市タンペレを結ぶ船旅である。6月から8月半ばまで、往路、復路とも1日に1便だけ運行されている。というのも、片道ゆうに8時間を超える長旅なのだ。
ハメーンリンナは、フィンランドが誇る作曲家ジャン・シベリウスの生まれた町でもある。1865年に生まれ、 ヘルシンキの音楽院に進むためハメーンリンナを離れるまで、シベリウスはおよそ20年をこの町で暮らした。 町の中心部にあるシベリウスの生家は博物館として保存され、一般公開されている。
レヴォントゥリの踊る丘
オーロラは冬の夜のものというイメージがあるが、実は1年を通して現れていて、フィンランド最北部では年間の出現日数はなんと200日にもなる。しかしながら、夏は夜が明るすぎて到底私たちの目ではオーロラを捉えられないのだそうだ。ヘルシンキでも年間20日ほど現れており、そのうちの数回、秋から春にかけての晴れた夜には北の地平線の方角に見えるとか。
サーメ人は独自の言語を持っているが、フィンランド語に近い系列の言葉で、いずれもウラル語族の一派であるフィン−ウゴル語派とされる。現在の総人口は7〜8万人、そのうち約7000人がフィンランドに暮らしている。
フィンランド語ではオーロラを「レヴォントゥリ」(revontulet:狐の火)という。これは、言い伝えによると、夜の雪原を狐が駆け回る時、トゥントゥリ(フィンランド語で丘、山の意) に尾が触れて雪が舞い上がり、その雪の結晶に月の光が映ってオーロラになるとされているからだ。
森の中へ、日差しの中へ
水辺の静寂
ヘルシンキ小景
一、季節の足音
二、あかあかとゆらめく街
三、のどかな要塞
真夜中の白い街で
真夜中過ぎの一時間 ラウマ
バルト海、栄華の旅
七百年を遡る町…タリン
ヘルシンキからタリンまでの距離は80kmほど。フェリーで3時間半、高速船なら1時間半という近距離だ。ヘルシンキの人たちもしばしば日帰りで観光に訪れるという。16世紀にようやく小さな村として拓かれたヘルシンキから見れば、その300年も前から城砦都市として発展してきたタリンは歴史的な重みが素晴らしい魅力なのだろう。
1904年10月9日、皇帝ニコライ2世が遠征艦隊の出発を見送る観艦式が、このタリン(当時のロシア名はレーヴェリ)で行われたのだ。この観艦式の際、ロシア海軍の若い技術将校がタリンの旧市街も歩き、切妻屋根の家々やゴシック風の教会など、中世都市の持つ静かな美しさをたたえる手記を遺している。しかし1901年に完成したばかりのロシア正教のアレクサンドル・ネフスキー寺院については、中世の雰囲気と調和しないと感じたらしく、「巨大な屋根の白い建物が不協和音をたてている」と、ロシア人ながら批判的な印象を遺しているのが面白い。中世のゴシック建築の建ち並ぶタリンにとっては、いささかが違和感のある建物だったのだ。
「バルトのパリ」リーガの辻󠄀音楽師
ラトヴィア語では“リーガ”と発音するが、世界遺産の日本語表記では“リガ”と定められている。
首都リーガの起源は、1201年、ドイツのブレーメンのアルベルト司教がこの地に上陸し、キリスト教布教のための拠点を築いたことに遡るという。
やがてリーガはハンザ同盟に加盟し、貿易港として大いに発展を続けた。ノルウェーのベルゲンなどと同じく、ドイツ商人が大勢やってきてドイツ風の住宅を建てて住み着いたおかげで、「ドイツよりもドイツらしい」と評される中世ドイツの街並みが今なお随所に残っているわけである。
ノルウェーの瀧の下で
坂を歩く。港を歩く。…ベルゲン
ベルゲンは12〜13世紀にノルウェー最初の首都となった由緒ある町。
廻廊の入り江…ソグネ・フィヨルド
『カレワラ』を巡る旅
三人の鍛冶屋…ヘルシンキ
伝説の地へ…北カレリア
10世紀の終わり、カレリア地方のラドカ湖にあるヴァラモ島に建てられたという記録が残るヴァラモ修道院。
1939年にソ連との間に勃発した冬戦争、そして第二次世界大戦を契機にラドガ湖を含む東カレリア地方はソ連の領土となってしまった。そのため1940年、修道士たちは大切な祭祀動具、貴重なイコン画などとともに戦火を逃れ、現在のヘイナヴェシという地区に修道院を移転させ、今に至っている。
北緯六十九度の聖なる地
極圏の原生林の中で…サーリセルカ、イナリ
オーロラは、ちょうど地球の極地に王冠をかぶせたような形で、100〜300kmの高度に出現する。
先年、NHKが南極の昭和基地と北極圏のスウェーデンでオーロラの同時観測を行い、オーロラが両極に同時に同じような形で現れることがわかった。
1991年のソヴィエト連邦崩壊までソ連との国境付近は常に緊張状態にあったから、国境に近づけば近づくほど人家は消え、原野となり、対向車も激減する。
うら若草のもえいづる心まかせに
郷愁の谷…フィスカルス
味覚の扉
ムーミン・ワールド
サウナの愉しみ
フィンランドの人々にとって、サウナは神聖な場所とされてきた。かつては出産の場所でもあり、第二次大戦以前の世代にはサウナで生まれた人が少なくないという。