語学の天才まで1億光年(アフリカ等)

語学の天才まで1億光年 表紙

語学の天才まで1億光年

高野秀行 著

集英社インターナショナル 発行

2022年9月30日 第2刷発行

 

著者が19歳から29歳まで、年代にすれば1985年から1996年にかけての、外国語学習や海外でのユニークな活動について書かれた本です。

 

第一章 語学ビッグバン前夜(インド篇)

驚きの海外英語初体験

「正しさ」にこだわる人はいない

奈落の底で語学の真実に開眼

 

第二章 怪獣探検と語学ビッグバン(アフリカ篇)

フランス語という“魔法”

先生でもない、ネイティブのヒッピーのフランス人からフランス語を教わる著者。

授業をまるごとテープレコーダーで録音して、家に帰ってから彼女のおしゃべりを全部文字起こしした。わからないところは辞書や文法書と首っ引になって類推する。

さらにそのテープ起こしをチェックしている先生のしゃべりも録音した。

 

ゴジラ襲来

コンゴ川中流域の人たちが交易のため意思疎通ができる共通語を編み出した。この言葉はやがてコンゴ・ザイール全土に広まった。それがリンガラ語である。アフリカでも話者数がベスト5に入るメジャー言語と聞いていた。

川沿いに作られたのは、熱帯雨林のコンゴ盆地では、昔から川が街道であり、商売や移動は川を通して行われていたからだ。

 

語学ビッグバン

外国人は皆フランス語でコミュニケーションを取り、誰もリンガラ語を学んだりしないから、リンガラ語を使うと驚かれる。

 

ウケる! リンガラ語学習

ザイールでは(特にキンシャサでは)リンガラ語万歳だった。

一方川を挟んで対岸のコンゴでは知識層はフランス語を好み、リンガラ語をあまり話したがらない。

ザイール人は旧宗主国のベルギーに対するリスペクトが皆無に等しい。また独裁大統領がヨーロッパからの脱却を訴えた。

一方コンゴは旧フランス領で、フランスとの関係は良好と言われていた。

 

謎の怪獣はフランス語で何と呼ぶか

コンゴの村ではフランス語を知らないのに数と単位だけは知っているという人もいた。つまりフランス語は「数から現地を侵食していく」のだ。

後で気づいたが、外来語の単位と同時に数詞まで置き換わってしまったのは日本語も同じだ。やまと言葉での数え方は一つ、ニつ、三つ…だが、「枚」「個」「本」といった中国語の助数詞が導入されると数詞まで「一枚、二個、三本」といった具合に、中国語に侵食されてしまった。

 

コンゴは、多くのアフリカ諸国で見られる現象だが、言語間は建物に喩えると3階建てみたいな構造になっている。

一番上の3階には高級デパートのような公用語のフランス語世界があり、2階は共通のリンガラ語で作られる地元の中央市場みたいな世界になっていて、そして一番下の1階には「民族語」とも呼べるローカル言語の屋台が並んでいる。

 

親しくなる特効薬の強烈な副作用

現地の共通語であるリンガラ語を話すことによって、桁違いのスピードと深さでコンゴの人たちと親しくなる方法を確立した私たちだったが、まもなくこの効きすぎる薬の強烈な副作用に悩まされ始めた。

「親しくなる」とは、互いの距離が近くなることであるが、日本人とコンゴの人たちでは距離感が違う。近くなるところか、どんどんこちらの中に、精神的・物理的両方で入ってくる。

 

言語には「うまく話せる人の方が優位に立てる」 という理不尽な法則がある。私はこれを「言語内序列」と呼んでいる。

日本でも英語を話す外国人に会うと、むやみにビビってしまう日本人は多い。ビビらないまでもリスペクトはする。ところが相手が日本語を話すと、途端に横柄な口調になる人のなんと多いことか。

 

マルチリンガリストの苦悩

村の会議は多分に儀礼的なもので、実際の交渉はとある家の軒下でリンガラ語とフランス語の交じったりひそひそ話で行われた。すなわち「カネはいくら出すのか」ということである。

( 国会とかの会議のように、どこでも会議前の打ち合わせが大切で、会議自体は儀礼的になってしまうことが多いようです)

 

アイデンティティ・クライスとボミタバ語学習

民族語の世界とムベンベの正体

ガボンやサントメは言語構造が最上階(2階)がフランス語で、1階が民族語という2階建て構造だった。

 

現地の人に、どの民族かと聞くのは失礼だから、どの言語を話すのかと聞く。その言語をもとに民族もわかる。