
日本語の森を歩いて
フランス語から見た日本語学
フランス・ドルヌ+小林康夫 著
講談社現代新書 1800
2005年8月20日 第1刷発行
発話からはじめて
第1章 奥のほうへ進んでください
フランスなどのように、通りと番地が住所になっているのと違い、日本の住所は分かりにくい 。だから日本人はお客様への招待状に、手書きの小さな地図を必ず添えるのでしょう。パリでは誰もそんなことはしません。
フランス人にとって森(forêt)には奥がないのです。森というものは、周囲のどこからも入ることができます。そしてそのまま向こう側に抜けることができます。また平野が続いていくだけです。
一方日本人にとって、森の奥は山になります。 はっきりした境界なしに、曖昧なまま、漠然ともっと深い山の空間に接続しています。
第2章 玄関先で失礼します
第3章 表参道で降りる
フランス語なら「vivre」 あるいは名詞の「vie」の一語しかないのに、対応する日本語の豊富なことにはいつもびっくりします。「命」「生命」「人生」「暮らし」「一生」「生活」などなど、さすがアニミズムの国だと言いたくなります。
第4章 先生に本をもらった
第5章 行ってきます
日仏カップルの、日仏二カ国語をしゃべる幼い息子さんが「行ってきます」 というのを聞くと、「行くか、来るか、どっちか一つにしてください」と理屈をこねるのだそうです。
「行ってきます」を、そのままフランス語に直訳することは不可能。
第6章 助けて!
第7章 お湯を沸かして
「湯」をフランス語では「eau chaude」と二語からできていて、つまり単一でなく複雑な概念ということになってしまう。
また文字通りだと「水を沸かしたものを沸かしてください」ということになり、論理的に理解できない。
第8章 捻挫は治った
日本語の「治る」は、人でも病気でもどちらも可能なようですが、しかし「病気が治る」の方が自然なようです。
それに対してフランス語の「guèrir」は圧倒的に「人+guèrir」が強いようです。
第9章 よくまあいらっしゃいました
第10章 よく言うよ
第11章 ちょっと待った!
「ちょっと待った」の「た」は排他的断定機能
第12章 しまった!
第13章 いたっ!
第14章 すごいよね
フランス人だけではなく、西欧語を母語にする人たちにとって、日本語の持つ不思議な特徴の一つに主語の不在があります。
日本語は、たとえ主語が主語として明示されていなくても、発話の空間の中で問題となる主体が指示されるシステムを持っています。
日本語はフランス語などと比べて、言語が発話の次元の主体間の関係に大きく依存しています。
第15章 おあとがよろしいようで
日本で日本語で、「以上です」 と言って発表を終わらせるのは、私にはいつもかたく感じられます。フランス語の世界では、そこで語った最後の文が結論だとわかれば、わざわざ他の決まり文句を付け加える必要はありません。改まった口調では
Je vous remercie de votre attention.(御清聴ありがとうございました)
という言い回しがありますか、そういう決まり文句を必ず最後に使わなければいけないわけではありません。