パリの下宿の思い出① ネズミにかじられる

自分がパリで住んでいた下宿は、キッチンと寝室、そして応接室がある築30年ほどのアパルトマンだった。
場所はパリ南西部の15区。高級な16区に住んでいたフランス人女性の同僚には「サンパなところね」と言われた。確かに一般住宅街で、なおかつ店なども多いところなので、高級感は無くても、雰囲気はいいのかもしれない。
また治安も、ほかの区に比べれば良い方だったと思う。大家が部屋に来たとき、たまたま電話のそばに貼ってあった職場の連絡網を見て「この人の区は危ないわね」と言っていたのを思い出す。失礼なことを言っているなと思ったが、実際に不動産を所有している立場にすれば、切実な問題なのだろう。
ここは立地もよく、メトロの駅にはそれこそ五歩くらいで、その階段に着くくらいだった。雨が降っていても傘も差さずにメトロに向かっていったものだった。
 
立地は結構よかったのだが、ひとつ困った問題があった。それはネズミである。
部屋の壁沿いに、ちょこちょこ走っているのである。
まだ隅っこを走り回るだけなら、「おっ、またチュウちゃんが走っているな」というくらいで我慢できるのだが、一度日本食料品店で買っていたインスタントラーメンの袋を破って、かじられていたの見つけたときは愕然とした(笑)。
日本で買うのよりよっぽど高価といっても、たかがラーメンである。それでもやはりあまり気持ちのよいものではなかった。
それ以後、インスタントラーメンさえもネズミよけのため、冷蔵庫の中に入れるようになってしまった。
哀しい話である。