パリの下宿の思い出② 倒れる洗濯機

自分の下宿は築30年くらいだったが、冬には床暖房が使えた。日本ではあまり普及していないが、フランスでは備え付けられてたアパルトマンも結構多いようだ。やはり冬の寒さの違いがあるのだろう。おかげで冬の朝でも、目覚めのときに寒かったなあという記憶がない。
ただ、その代わりというか、冷房はなく、仕方なく夏でも扇風機だけですごした。空気が乾燥している分、日本よりかはまだすごしやすい。
そして洗濯物は外では干さず、すべて部屋の中で干していた。それでも生乾きにはならず、不快ではなかった。これも乾燥しているための効果である。
洗濯機は日本と違い、内部にドラムのようなものがあり、その中で揺り動かして洗う、という様式だった。そのせいか結構振動がある。まあ新品だとその振動幅も少ないのかもしれないが、自分の場合は前の住人のものを引き継いでいたので、振動が気になっていた。
さらに備え付けた位置が他の床より少し高くなっており、洗濯機を動かすと微妙に設置場所が動いてしまうのだ。だから洗濯するときは、注意してそのズレを直していた。
それでもあるとき、いつもよりたくさん洗濯物を入れて、なおかつ疲れていたのでついウトウト寝てしまった。
とすると、ドーンという音で目が覚めた。
なんと洗濯機が倒れてしまったのである。
幸い床も洗濯機も壊れず、下の階や隣人からも苦情はなかったが、それ以来のんきな洗濯さえも、こんなことで注意するようになってしまったのだった。