英国一家、フランスを食べる

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英国一家、フランスを食べる
マイケル・ブース 著
櫻井祐子 訳
2015年6月6日 第1刷発行

イギリス人でフードジャーナリストのマイケル・ブースさんが、フランス料理に対する理解を深めるため、家族と共にパリに住んだときの手記です。
彼はパリで名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」で有名シェフの指導を受け、その後有名レストラン「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」や「ジャック・カーニャ」で修業します。そういった経験やパリでの生活を真剣に、そしてユーモアを織り交ぜながら書き綴っています。
マイケルさんが書いた「英国一家、日本を食べる」という本がベストセラーとなっていたため、今回の邦題も同じような感じにしていますが、内容的には英語の原題「Sacré Cordon Bleu: What the French know about cooking」の方が適しています。
自分は料理もほとんどせず、グルメでもないのですが、それでも十分楽しめました。料理好きの方なら更に楽しめ、なおかつ参考になる本だと思います。
なんでも鍋にこびりついた茶色いエキスはうまみ調味料の一つだそう。だからテフロン加工は悪魔の仕業、だそうです(笑)

ル・コルドン・ブルーの校舎があるパリ15区
面積は広いが、これといった名所や美術館、繁華街の一つもない、ダントツでつまらない区だ。
観光客がここまで来るのは、安いホテルに泊まるときか、区の南端の ポルト・ド・ヴェルサイユで開かれている見本市に行くときに限られる。
また、ここの住人は、スーペルマルシェのモノプリであつらえた服を着ている(笑)。

僕の乗る6号線は地下のトンネルを抜け、アパルトマンの4階と同じ高さの橋の上を通ってセーヌ川を渡るとき、まるで大砲が発射されたようにパノラマが広がる。
この列車に乗るたび、僕はパリと恋に落ちるのだった。
(激しく同意・笑)

パリの農業国際見本市
この見本市は、田舎のネズミが羊を連れて町のネズミを訪れるようなものだ。
この見本市はモーターショーのように屋根のある巨大な展示場で行われ、純血種の乳牛や羊、ヤギ、豚が、まばゆいスポットライトを浴びたフォードやクライスラーの最新モデルのように展示されるのだ。
フランス人は生きた家畜がどういう過程を経て自分の口に入るのかを知ってもぜんぜん平気なようだ。だから見本市の会場に食品市が併設されているのは、フランスではごく普通のことだった。

著者がフランス料理で太ってしまった後、ル・コルドン・ブルーの同級生が、辻静雄さんの著作「Japanese Cooking: A Simple Art」をくれた。これはパリでの日々と同じくらい人生を変える瞬間だった。その意味で、 パリに行かなければ、日本料理についても書くことはなかった。

日本人が料理の美しさを当たり前のように理解できるのは、懐石料理の伝統があるからだ。
最近の欧米のレストランは、どんなに現代的で野心的で、急進的な店であっても、懐石を料理の模範としている。
地元で採れる旬の食材をもとにメニューを考え、視覚的なインパクトと知的複雑さに味と同じくらいの重点を置き、15から20種類、またはそれ以上の料理を少量ずつ出すシェフが増えている。