史料と旅する中世ヨーロッパ
図師宣忠 中村敦子 西岡健司 編著
ミネルヴァ書房 発行
2025年4月1日 初版第1刷発行
本書は教科書などの歴史叙述の背後にどのような史料が隠れているかに気づき、それらの史料を読み解くコツを学ぶとともに、史料に基づいた歴史像とは何かを考えるために編まれたテキストです。
序章 史料を紐解き、過去の世界に旅しよう
史料に関して気をつけるべき3つの心得
・誰が何のためにその史料を生み出したのか、文脈に注目すべし
・バイアス(偏向)を含まない史料はないと肝に銘じよ
・史料が何を語っているかと同時に、何を語っていないかを考えよ
第Ⅰ部 権威と統治
第1章 王は「強かった」のか ノルマン征服とウィリアム征服王
第2章 イコノクラスムのはじまりとレオン3世 8世紀のビザンツ帝国を取り巻く世界
イコノクラスム
皇帝レオン3世(在位717〜741)治世に始まった。キリスト教信仰の実践においてイコン(聖像、聖画)を使用し、崇敬することが旧約聖書に書かれているモーセの十戒の一つである「偶像崇拝の禁止」に反しているとして、抑圧する政策・主張である。
第3章 聖性・儀礼・象徴 中世後期チェコの国王戴冠式次第より
史料への扉1 アイスランド・サガ 過去の真実を物語る
サガとは主に12世紀後半から14世紀のアイスランドで書き残された散文物語の総称である。古アイスランド語 によって書かれ、大小合わせて200篇以上が現在まで伝わっている。
史料への扉2 史料としてのビザンツ文学
第Ⅱ部 教会と社会
第4章 辺境に見る西洋カトリック世界 13世紀スコットランドの一証書を通して
第5章 正統と異端のはざまで 南フランスの異端審問記録に見る信仰のかたち
第6章 魔女裁判って中世ですよね? 例話集に見る魔術と悪魔
魔女裁判(あるいは魔女狩り)が中世のことだと思っている人は多い。大航海時代や宗教改革の始まりあたりを中世と近世の境目とすると、15世紀の前半にちらほらとそれに類する事件が確認できなくもないが、一般的な現象となるのはようやく次の世紀になってからであり、最盛期は16世紀後半から17世紀前半にかけてと言えるであろう。つまり魔女裁判は近世的な出来事と言った方が当たっているのである。
第7章 「十字軍」とは何か? 12世紀の公会議・教会会議決議録より
史料への扉3 社会を通して大学を、大学を通して社会を読む
第Ⅲ部 都市と農村
第8章 都市と領主の付き合い方 中世のフランドル地方をめぐって
第9章 つながり合う都市 ロンバルディア同盟にみる「都市同盟」の意味
第10章 都市と農村のあいだ 北イタリア・バッサーノの条例集に見る自治
半都市的集落
都市か農村かと言われれば農村 だが、バッサーノのように囲壁で囲まれた集落で、そこには農民 以外の文書作成の専門家である公証人や靴屋、鍛冶屋、製粉屋など様々な職人や、学校の教師なども住んでいるような集落
ポデスタ
イタリア都市に独特の制度で、他都市から招聘されて当該都市の司法・軍事・行政を統括する役人
第11章 抑圧された農民? 中世ドイツの農村社会
資料への扉 4 公証人記録 名も無き人々の生きた痕跡を探る