イタリア中世都市国家研究 清水廣一郎 著

イタリア中世都市国家研究 清水廣一郎 著 表紙

イタリア中世都市国家研究

清水廣一郎 著

岩波書店 発行

昭和50年3月28日 第一刷発行

 

内容はかなり専門的です。日本語に当てはめにくいイタリア語の単語が沢山出てきます。

 

一 イタリア中世都市国家の構造

12世紀末の北中部のイタリアの都市国家は、多かれ少なかれ周囲の農村地帯に拡がる領域(コンタード)を持つ領域国家の形態をとっていた。

 

1 十三世紀末の都市

 一 十三世紀後半の政治的経済的状況

 二 都市国家と支配層

 三 都市の領域支配

 

2 十四世紀の危機

 一 経済的後退

 二 コムーネの危機

 

二 十三世紀フィレンツェのコンタードについて

1 史料 Il Libro di Montaperti

2 コンタードの組織

コムーネ期における農村の定住様式

カステッロ・・・城壁ないし柵を備えた防備村落・農村都市

ヴィラ・・・城壁を持たない

3 穀物徴集と保証人

 

三 イタリア中世都市の領域支配

1 コンタード行政の基礎単位

2 コンタード行政の基本的特徴

 一 populus

小教区であると共に、村民集会と村役人を持つ共同体

 二 裁判権の集中

 三 「初期の」civis silvaticus(都市に移住した者)

 四 コンタードのコムーネ

農村都市と戦略拠点としての集落

3 税制の発展

 一 focatico

各戸に課される定額税、nobiles,militesが免除されている

 二 libra

各戸において相対的な資産状況が査定され、これが金額(リブラ)で表示される。

そして財政上の必要が生じた都度、その時の課税率が定められ、各戸の課税標準額に応じて徴税される。

4 十三世紀後半から十四世紀初頭における社会的変化

 

四 十四世紀トスカーナの農村コムーネ

フィレンツェ領の辺境に位置する二つの農村コムーネをとりあげ、十四世紀末に作られたその条例の内容を検討

1 カステルフランコ・ディ・ソプラ

 一 カステッロ

カステッロ(防備集落)を建設し、付近の住民を集住せしめ、もって辺境の防衛と支配のための拠点としようと試みた。

 二 評議会、諸官職について

 三 不法行為と刑罰

 四 都市条例との関係

2 サンタ・マリア・ア・モンテ

 一 カステッロ

 二 評議会、諸官職について

 三 裁判権について

 

五 「チョンピ一揆」に関する二つの記述史料 

1378年7月、フィレンツェで生じた「チョンピ一揆

小アルティのメンバーや毛織物工業の従属的労働者が蜂起し、オリガルキー派有力者の家を焼き、市庁舎を包囲し、ついにプリオーリを辞任に追い込む。

そしてそれまでアルテを組織することを固く禁じられてきたポポロ・ミヌート、染色職人、仕立て屋などは、それぞれのアルテを形成することにおいて、はじめて政治に参加する資格を獲得した。

さらに、彼らは、財政改革を中心とする一連の請願を提出し、これを法として可決せしめ、オリガルキー支配の都市コムーネに大きな打撃を与えた。

しかしポポロ・ミヌートが都市政治に大きな力を及ぼした期間は、七月末から八月末にいたる一か月余りに過ぎない。

1 Alamanno Acciaiuoliの年代記

パトリチアートの立場から執筆された一揆の責任追及の書

2 無名人の年代記

市庁舎の衛士による書。ポポロ・ミヌートに同情的な唯一の年代記

むすび

チョンピ一揆と総称される政治的変革の多面的性格

・有力市民間の権力闘争

・小アルティのメンバーや羊毛アルテに包摂されていた染色職人や仕立て屋などの手工業者層の権利要求の運動

・ポポロ・ミヌートと呼ばれる従属労働者の抵抗の運動

 

六 十五世紀フィレンツェの税制改革 1427年のカタスト

カタストは従来の税制を改革し、市民および領域住民の資産状態の全般にわたって各人の申告を求め、それに対する査定を行い、その結果を金額によって表示し、k税の基礎とした。

1 都市コムーネの財政構造

2 カタスト成立にいたる政治状勢

3 カタストの内容

4 十五世紀初頭の都市

 

七 十四世紀ピサの農村行政 公証人書式集の研究

一公証人が筆写し、自ら使用していたもの。すなわち、公証人が実務のために作成した稿本であり、条例その他の法文も私撰によるもの

1 研究史概観

p324-325 ピサの中世史

2 ピサのコンタード

3 史料comune A,7

 一 条例

 二 書式集

これは単なる書式集ではなく、「公証人のマニュアル」であり、「コンタード官吏のマニュアル」でもある。

 三 法令

4 カピタニーアの行政

5 公証人について

十三世紀末から十四世紀を通じて、公証人は、中世イタリアのコムーネ世界において経済的にも社会的にも重要な位置を占めていた。

土地、家屋の売買、商品取引、高利貸付、結婚、遺言、会社の成立、土地の賃借、家畜飼育契約、徴税請負契約などの様々な契約を登録簿に記録し続ける。

公証人はコムーネの官職でも活動していた。