(コンパクト評伝シリーズ9)
G・ホームズ 著
高柳俊一・光用行江 訳
教文館
1995年4月25日発行
13世紀ころのフィレンツェでは、喜劇的な詩、散文の物語、政治的な記録の中で、実在の人物をリアリスティックに描くことが多かった。それが「神曲」の中の、極めて具体的な個人的の描写につながっているのではないか。
「神曲」の中で、ダンテを導くウェルギリウスは「アエネイス」という彼の作品の中で、死者の霊魂に会うための冥界の旅の記録と、アエネイスの王としての運命を啓示するという、二つの意味を持たせていた。それがダンテにとっても大切な問題であった。
当時のイタリアをめぐる教皇と皇帝の争い。またアヴィニョン捕囚の時代。これが「神曲」にも反映されている。
ダンテのベアトリーチェへの思い。「宮廷愛」から「宗教的愛」への変換が神曲の中でも行われている。