マキャヴェッリの生涯 その微笑みの謎

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マキャヴェッリの生涯
その微笑みの謎
マウリツィオ・ヴィローリ 著
武田好 訳
白水社
2007年6月20日 発行

フィレンツェの、ヴェッキオ宮の一角に、かつてマキャヴェッリが仕事をした場所がある。
そこに飾られている、マキャヴェッリ肖像画
その肖像画マキャヴェッリは、写真のように、口元にかすかな笑みを浮かべている。
この本はその微笑の謎を、マキャヴェッリの人生を振り返りながら考察していく。
ちなみにこの絵はサンティ・ディ・ティートによって描かれたものである。

塩野七生さんの「わが友マキャッヴェリ」を愛読しているものにとっては、当然ながら同じようなエピソードが出てきて、その取り扱いの違いを吟味する楽しみがある。
微妙にリンクして離れてまたリンクして、という感じだ。
それにしても、改めて「わが友マキアヴェッリ」の三部構成には感心する。
マキアヴェッリの移り住んだヴィラからのフィレンツェの眺めを序章にあげ、「何を見たか」でロレンツオ・イル・マニフィーコやサヴォナローラの行動を述べ、「何をしたか」でマキアヴェッリが実際に体験した君主や武将との交渉をあげ、「何を考えたか」で名著「君主論」を書くに至った経緯などを詳しく述べている。

この本の著者は、最終的にマキャヴェッリを共和主義者と結論付けている。
一方、塩野さんはマキャヴェッリを、共和シンパから「転向」した者とし、「政体を維持するためには、その主義に反することも行わなければならない」というマキャヴェッリの言葉を引用し、彼の政治学者としての革新性、独創性を強調しているように思える。

最後にこの本では、彼の微笑みの意味を、人生の悲惨な事柄に負けないため、つまり人生を守るものであったと同時に、自由と市民の平等への愛、があったと説いている。