ヨーロッパ音楽家紀行 天と地のひびき

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ヨーロッパ音楽家紀行
天と地のひびき
小塩 節  著
菅井日人  写真
日本キリスト教団出版局
2002年10月1日 初版発行

バッハ、モーツアルト、ベートーベンから、フォーレメシアンブリテンまで、16人の著名な作曲家が生まれ育った街を訪問し、美しい写真と共に彼らのそこでもエピソードなどを伝えている。
一応キリスト教団による出版だが、賛美歌等には必ずしもこだわっていない。
しかし欧州の文化紹介では、どのような形であれ、キリスト教の影響が出てくるのは当然のことである。

ベートーベンのエピソード。
ベートーベンが「第九」終結部の詩を、どたばたの中でシラーの詩を入れたという説を否定し、彼がフランス革命の知らせを聞いたとき、シラーの詩を高らかに口にし、更には革命歌「ラ・マルセイエーズ」のメロディに、その歌詞をのせて歌っていたそうである。
これを読んで、昔読んだジャズピアニストの山下洋輔さんのエッセイの中に、ベートーベンと山下氏とのパロディ対談というものがあり、そこでベートーベンに「あなたが本当に伝えたかったのは詩だったのではないか」という説を投げかけていたのを思い出した。

メンデルスゾーンのエピソード。
ユダヤ系だった彼は、ナチスドイツの時代は、ユダヤ人というだけで認められなかった。
更に第二次世界大戦後の旧東ドイツは、ブルジョア音楽という烙印を押した。
さらに世界が彼の音楽を認めた後でも、今度はユダヤ人のほうが彼を裏切り者呼ばわりした。
「虚心に彼の音楽を聴けば、こんなくだらないことをいう気にはならないだろうに。人間はレッテル貼りという卑劣な業が好きなものである。」との著者の方の嘆きが身にしみる。