トゥールのベルト・モリゾ

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トゥールのモダンな会議場から、大聖堂前の美術館に着く。
1892年、印象派の画家、ベルト・モリゾはこの美術館に立ち寄っている。
画家でもあり、またモデルでもあった彼女。神戸と東京で行われた「オルセー美術館展」でもポスターなどで、その美しい姿を見た人も多いはずである。
この1892年という年は、彼女にとっては辛い年だった。
夫ウジューヌ・マネを亡くしたからである。
それでもその直後の、夫と準備していた個展では成功を収めていた。

モリゾは個展後、娘との傷心?旅行で、この美術館に立ち寄り、美術館の窓からの景色を描いた作品を残している。
特に有名な作品ではないが、2004年に、日本で行われたマルモッタン美術館展で、その作品もひっそりと展示されていた。
その絵は、丸く植えられた緑の中に、白い彫像が浮かび、左側には池、そして背景には林の間にポツンぽつんとある家、そしてどんよりとした空模様だった。
モリゾ特有の荒々しいタッチで描かれている。
その絵の中には、大聖堂もない、ただの公園の風景である。
おそらく今も美術館のそばにある、フランス式庭園の場所だと思うが、はっきりそうかは確認できない。

というのもこの美術館の歴史を調べてみると、1789年というたいへんな時代に大司教館を利用し、美術館となっているが、革命の混乱の中で、劇場用ホールや中学校などに使われた時期もあったようだ。
1892年時点では、どうなっていたのかはわからない。
正式に市の所有するものとなったのは1910年だったからだ。

しかしながら改めてその絵画の解説を読むと、そこで彼女はブーシェという画家の絵の模写もしていたらしい。
市の所有ではなくても、大体の美術館の体は、なしていたようだ。
ちなみにブーシェの絵も今に残っている。
たとえ混乱した、騒がしい時代でも、絵画は黙ってひっそりと残り、みんなにメッセージを伝え続けてくれる。