遥かなる旅への追想 辻邦生 著

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遥かなる旅への追想
辻 邦生 著
1992年4月20日 発行
新潮社 発行

「旅への追想から」「歴史の奔流から」「同時代の視線から」「魅惑のパリから」の四章にわたって、紀行文から帯の推薦文まで、長短織り交ぜたエッセイ集となっています。
舞台はヨーロッパ全般ですが、やはりどうしてもフランス中心に書かれています。

1968年に初めてソヴィエトを訪問した筆者。
同行の埴谷雄高が持っていた、レニングラードドストエフスキーの文学地図をなくしてしまう。
当時、地図はホテルで取り上げられることもしばしばあったという。

1969年の9月、パリから汽車でモスクワに向かう筆者。
夜明けになって、朝霧の中の、みずみずしい緑の白樺林が続く。
「ぼくのロシア」を発見する。

1977年の旧ソヴィエトの旅。
キエフでのガイドのすさましい日本語。
ウラジオストックで日本のラジオを聴いて日本語を勉強した。

フランスでは地方ごとに屋根の色が違う。
おそらくどんな素材が手に入りやすいかによるものだろう。
ロワール河口からナントまでは赤瓦だったが、アンジュからソーミュールまでは黒スレート葺きとなり、トゥールに近づくと、また赤瓦になる。
ともあれ、統一のある色調は何より美しい。

10月のマルセーユ
落日を見ていると、ランボーの詩を思い出す。

Elle est retrouvée.
Quoi? —L’Eternité.
C’est la mer allée.
Avec le soleil.

また見つかった
何が? 永遠が
海にとけゆく
太陽が

いったいランボーはどんな気持ちでマルセーユのこの落日を見たか。