サマセット・モーム 「昔も今も」

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昔も今も
天野隆司 訳
2011年6月10日 第一刷発行
 
読みたいなと思っていながら読めなかった本を、たまたま発見したのは嬉しいことです。
この小説は塩野七生さんの「わが友マキャヴァッリ フィレンツエ存亡」で見かけたのですが、その中には「絶版になっていて、しかも出版元は、今のところ再刊行の予定もない」と書かれてありました。
もちろん、まめにネットで調べていれば、すぐに見つかるのでしょうが、そこまでの熱心さはなかったのです。たまたま本屋の店頭で見つけて、あっと驚き、喜んで買った次第です。
この本の内容は、マキャヴェッリチェーザレ・ボルジアのもとにフィレンツエの書記官として派遣されていたときが主な舞台になっています。そのときの交渉と、マキャヴェリの浮気話がメインストーリーになっています。交渉にも浮気にも、一生懸命策を弄するマキャヴェッリの姿が面白いですね。
交渉自体は史実なのですが、浮気については全くの創作です。ただ、その話自体は後にマキャヴェッリが書いた喜劇「マンドラーゴラ」のパロディとなっていて、少なくともマキャヴェッリの頭の中にはこのような浮気話があったようです。
最近チェーザレの劇画があるようなので、それを読んでいる人や、自分のように塩野さんの作品に親しんでいる人には更に興味深く読めるかと思います。
あとサマセット・モームなのですが、自分が学生のとき彼の作品である「人間の絆」を英語の授業で一生懸命読んだ記憶があります。
この作品の中では、後半作家としてのマキャヴェッリが出てくるとき、なんとなくモーム自身の肉声が聞こえてくるような気がしました。