サマセット・モーム作「昔も今も」より

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サマセット・モーム作「昔も今も」表紙

 

サマセット・モーム作、天野隆司訳、「昔も今も」(ちくま文庫)より

フィレンツェでの官職を辞し、サン・カシアーノの農場にひきさがったマキアヴェリが、息子がワナでつかまえたヒバリの串刺しを食べながら呟く

こいつら、歓喜のあまり大空高く舞い上がり、ぴーちくぱーちく、心臓が破裂せんばかりに囀ずっていたが、ぐうたら小僧のワナにかかって、焼き鳥にされて食われてしまう。人間も同じだなあ。高邁な理想を追いもとめて、天空高く舞い上がり、美しい夢物語を思い描きながら、無限・永遠を切望して、ぴーちくぱーちく鳴きちらしたあげく、つむじ曲がりの運命の手にとらえられて一巻の終わり、あとは蛆虫どもの餌食になってしまうんだ。

マキアヴェリが信奉したチェーザレ・ボルジア、またマキアヴェリ本人の運命でもあった。