巴里籠城日誌 維新期日本人が見た欧州(~巻の五)

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校訂現代語訳 
巴里籠城日誌
維新期日本人が見た欧州
渡正元 著
横堀惠一 校訂現代語訳
同時代社
2016年12月8日 初版第1刷発行

1839年生まれの渡正元が実際にパリに滞在して見聞した普仏戦争、その中で特にフランスのパリ籠城時の記録です。当時30代の日本人の若者から見た、しっかりしたフランス語能力に裏付けられた詳細な日誌です。
当時の日本人のフランスをはじめとする欧州情勢の見方がたいへん興味深いです。そして戦乱の状況やパリにおける人々の生活、特に肉の不足などの食料の欠乏などがリアルに描かれています。

1870年9月2日
ナポレオン3世が仏帝であり、全国民が彼を崇め、心を合わせ協力して防戦すべきだ、なぜ自国の帝を拒み、憎むのか、とフランス人に尋ねる筆者
今、仏全国の恨みが既に彼に向き、救いようがない、と答える仏国人

パリ籠城中、書簡の往復は皆気球を使うが、急な用事や小事件のときは伝書鳩を使う。

1870年10月10日
伊軍がついにローマに勝ち、ローマ法王が出て降伏した。その土地が全て伊国領に入り、今後その一部となる。
 
1870年11月4日
(フランス)政府や民衆の状態を見ると、国家の存亡が間近に迫り、(パリ)城門の外には無数の強敵が満ち溢れ、日夜隙を窺っている時期であり、人民が皆心を合わせて協力し、専ら防衛の手段を取るべきなのに、逆に政府を改革し、急に市民の人民を動揺させ、兄弟争うような内乱を生もうとする。
狂っているのか?愚かなのか?そもそも反逆者なのだろうか?
我々はその目的を全く理解できず、全く嘆かわしい。

1871年1月6日
思えば、仏国のような国は、傾向として、ナポレオンのような帝王が上にいて、自ら市内を足元に治め、全国を一つに掌握しなければ、とてもこれを制御できない。
とてもこの傲慢な人民では、民主共和の政治を永く行えないだろう。