イタリア・ルネサンスの巨匠たち 2 ジョット
イタリア・ルネサンスの巨匠たち 2 ジョット
フィレンツェ絵画の先駆者
ルチアーノ・ベッローシ 著
野村幸弘 訳
東京書籍
ジョット1267?~1337
同時代の詩人ダンテは、「神曲」の中で、ジョットの名声が先輩画家チマブーエを凌駕したと謳った。
ジョットはそれまでの中世絵画を様々な点で革新している。すなわち、
奥行きのある三次元的な空間を創出
立体的・彫塑的な人物像を造形
当時の建築物や日常的な人間の所作を生き生きと描き
ジョルナータ方式(一日の間に制作が見込まれる小さな面積の部分だけにイントナコを塗りついでゆく方法)という新しいフレスコ画技法を導入
この有名な聖人のジョットの捉え方は、まったく神秘的なところがないことに気づく。聖人は敬虔で信仰に篤いが、頑強で世俗的に描かれており、抑えきれない情熱を宗教で燃焼させるようなところは少しも見られない。
穏健派の宗教運動がそれを強力に支持した。
(個人的には「イノケンティウス3世の夢」にみるラテラノ聖堂を支える聖人の若々しい凛々しい顔がいいです。また「焔の車の幻影」で馬車が空に浮かんでいる姿はシャガールを思い出してしまいました)
パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂壁画装飾
ジョットの残した作品の中でもっとも重要な代表作
ジョットの最初の円熟期であり、アッシジにおける若書きの、生硬で激しい表現を生み出した挑発的な性急さはもう和らいでいた。
「ユダの接吻」におけるユダのどっしりとした姿。これはジョットが獲得したもっとも印象的な量感ある身体表現の一つ。
またユダとキリストの、完璧に表現された横顔
4世紀から13世紀末まで、聖なる人物、あるいは重要な人物は常に正面向きに描かれてきた。
聖フランチェスコは実際には髭をたくわえていたが、ジョットは髭を描いていない。
「穏健派」に代表されるフランチェスコ修道会の方針と関係している。
先鋭的で挑発的なアッシジ上堂
穏やかで古典的な物語のまとまりを持ったスクロヴェーニ礼拝堂
色彩が豊かであざやかになったアッシジ下堂
そして最後に洗練されたゴシックの時期
場面の本質を捉えた解釈
簡潔で緊張感あふれる構図
威厳のある人物表現は
他の画家の追随を許さない。
ジョットのまなざしは、神を中心とする観念的な世界から、人間を中心とする現実的な世界へと確実に向かい始めていた。
約100年後のルネサンスの到来を予告する近代絵画の夜明けといわれるゆえんである。