城砦の上から、ムーズ河上流方面を眺めます。
この河をもう少し上流に行くと、フランス領に入ります。
そして、シャルルヴィルという街のそばを流れます。
この街は、詩人のランボーの出身地です。
彼はそこから、歩いて国境を越え、ベルギーの地に立ち寄りました。
ディナンやナミュールはどうだったかわかりませんが、同じワロン地域のシャルルロワに滞在し、その時の詩も残しています。
彼のほかの詩は正直な所、あまりそのよさが理解できないのですが、シャルルロワ滞在時の『「居酒屋みどり」で』、という詩は好きです。
何年か前、ジャーナリストの有田芳生さんが、新聞のコラムでその詩の事を書いていました。それによると氏は実際にシャルルロアに立ち寄り、その居酒屋を探し当てたとのことでした。
現在では、多分駅前の、ホテルになっている所ではないかと思われます。
「居酒屋みどり」で
夕方の5時
八日この方、石ころ道を、歩きつづけた僕の靴
すっかり破れてしまってた、シャルルロワへといま着いた。
「居酒屋みどり」で僕はまず
トーストとハムを頼んだ、ハムはどうやら冷えていた。
久々で僕は楽々、両脚を、テーブルの下にのばしたり、
壁紙の暢気な模様を眺めたり。
そこへあの、目もと涼しく乳房のやけにでっかい別嬪が
出て来たのだからすばらしい。
―こいつ接吻くらいではビクともしない剛の者!―
にこにこしながら、註文のトーストと冷えかけのハムとを載せた
はでな絵皿を運んできた。
刺すような大蒜の匂いまでする桃色と白のハム
それさえあるに念入りに、彼女はビールまで注いだ、
大ジョッキ、夕日を受けて金色に泡の立つこと。
堀口大學先生による、名訳だと思います。
ユーモラスな解放感を感じさせてくれます。
シャルルロワの街紹介のマンガにも、この時の情景を載せていました。
ちなみにランボーは1891年の今日、マルセイユで37年(ラファエロと同じか?)の生涯を終えました。