ぼくはサイード②

今は家を出て、日本からの留学生、ヨウコと一緒に暮らしている。
といっても、彼女のアパルトマンに居候しているような感じ。のら犬と変わらない。
彼女、かわいいけど気は強い。
もともと、日本女性って、「おしとやか」というイメージがあったんだけど、ヨウコを見る限り、そんなことば、どこかに消え去ってしまう。
ヨウコは自分の出身地を「コメディの街」といっていた。
うるさくなければ生きていけないらしい。

そんなある日、ぼくたちの学校に、素晴らしいニュースが飛び込んできた。
パリ市立近代美術館で、みんなの作品を出展できるかもしれない、というのだ。
もちろんパリ市のお墨付きである。
こんなチャンスめったにない。
さすがぼくらの講師はすごい。ゲイで見かけはなよなよしているが、さすが芸術界では顔が利く。
クレイジーでいつもべたべたまとわりついてくるけど、ぼくらに道を開いてくれた。
さすがパリ、市長もゲイの街は違う。

まわりのみんなは準備を始めたが、ぼくは何もいいアイディアが思い浮かばない。
一方ヨウコは着々と準備を進めている。
透明なテントを買ってきて、天井から吊るす。
その中に丸いテーブルを置き、小物を散乱させる。
そして白いタンスを置く。半開きの中からは女の子の下着が半分取び出ている。
それでもまだ物足りないらしい。