自分はなぜイタリア好きになったのか

 イタリアに惹かれる一番のポイントは?というご質問を受けたので、この機会に改めて自分の今のイタリア好きの経緯についてまとめてみます。
 
パリ在住時
イタリア好きの萌芽は、やはりフランス滞在中に芽生えていたようです。
ニースを旅行したとき、マティス美術館そばの策に囲われたローマ遺跡や、海沿いの丘の山頂にある朽ちかけたローマ遺跡を見て、これはいったいどういうものだろう、と思い始めたようです。
更にリヨンやヴィエンヌの古代舞台劇場や、ニームやアルルの古代闘技場や浴場跡なども訪問しました。
しかしこの時点では特に研究したりはせず、単にその街の名所を訪問できてよかったな、という類の感動に終わっていたようです。
イタリア自体もこのときに一度、ミラノとローマを訪問する機会に恵まれました。
時間があまりなかったのですが、ミラノではガレリアやドォーモ、ローマではフォロ・ロマーノやヴァチカンを中心に見学しました。
当時は視点がどうしてもフランスと比較してしまいました。ローマではやはり遺跡の多さと、街中の教会が外観は古いのに(ローマ時代の大浴場跡を利用した教会などもありました)、内部がキンキラキン(笑)という感じがして、ヴァチカンの壮大さと含めて、やはりカソリックの総本山に来たのだなという印象を持ちました。
 
帰国後
日本帰国後はヨーロッパがやたら懐かしくなり、欧州に関する本やテレビ番組をよく見るようになりました。
そんな中出会ったのが塩野七生さんの本でした。
大概の本は、図書館で借りることが多いのですが、塩野さんの本で「わが友マキャヴェッリ」は思うところあって購入しました。
この本はマキャヴェッリの人生を通して、フィレンツェという都市国家の、ルネサンス期における激動の歴史が生き生きと描かれています。当時の繁栄と動乱を、つぶさに知ることができました。
その後、更に彼女の「ローマ人の物語」をどんどん読んでいきました。
これにより、ローマ帝国の素晴らしさ、特にインフラが当時いかに充実していたかを認識するようになりました。
これらの本が、フィレンツェやローマへの旅行を敢行するきっかけとなりました。
 
 
自分にとってのイタリアの魅力
上記の二作から見ても、イタリアはローマ帝国ルネッサンス二つの中心地であったことを痛感しました。
なおかつカソリックの中心地でもあります。
この三者は、後世から見ると、お互いを牽制しつつ、高めあっているという、複雑な関係です。
ローマ帝国は、もともと多神教国家として成立していましたが、後半にはキリスト教を国教とするようになります。
ルネッサンスはもともとギリシャ・ローマ時代の復興ということで成立したはずですが、その表皮はあくまでキリスト教という膜に覆われています。たとえば、ダンテの「神曲」などは、あくまでキリスト教の価値観にある地獄・煉獄・天国の中にありながら、出てくる人たちは、人間社会の栄枯盛衰・喜怒哀楽に満ち満ちています。
このような葛藤を、ごじゃらごじゃら繰り返した挙句に、イタリアでルネッサンスの終焉を迎えます。ダヴィンチがアンボワーズで人生の終焉を迎えたり、カトリーヌ・ド・メディッチがフランスに嫁いだあたりでしょうか。
それとほぼ同時に、世界、あるいは欧州の中心としてのイタリアも終わりを告げ、フランスにその座を譲ります。
しかしフランスの栄光は、イタリアに多大なものを負っていると言えるでしょう。
自分などは、フランスが範とした、その時代までのイタリアを見に行っているといっていいでしょう。