車窓に沈むトスカーナの黄昏

バスはほぼ満員になって
フィレンツェへ向けてひた走ります
曇り空の合間から
時々夕陽が差し込みます

途中の停留所で
前に座っている老女の横に
黙って老女が座ってきます
他人なのかと思いきや
いきなり言葉を交わし始めます

途中の少し大きな町で
ぐるりと工事中のロータリーを回り
たくさん人が入れ替わり
みんな家路に戻っていきます

フィレンツェに着く頃には
ほとんど外も真っ暗で
道沿いの店の明かりが
生活感を漂わせています
そんな通りの渋滞の中に
旅人も一緒に巻き込まれます

駅前のバスターミナルに着き
席から立ち上がろうとするとき
おもわず足がかじかみますが
なんとかそっと立ち上がり
そろそろバスを降りていきます

フィレンツェはすっかり闇の中です