村上さんのところ
村上さんのところ
答えるひと 村上春樹
絵 フジモトマサル
発行 新潮社
2015年7月24日 発行
この本は読者からの質問に村上春樹さんが答えていくという形式をとっています。
以前にも同じような本を出しておられ、たいへん面白かったのですが、今回も期待にたがわない、楽しい内容となっています。
硬軟織り交ぜたQ&Aの合間に、クスッと笑わしてくれるギャグも満載です。
イラストが故安西水丸さんから代わっているのが心配だったのですが、特に違和感なく楽しめました。
ひとまず今回の一番のキーワードは「村上主義者」です。
村上さんはよく言われる「ハルキスト」という言い方がお気に召さないらしく、それよりは村上主義者として欲しいとご所望されています。
それだと自分のような、村上さんの小説はあまり読まなくて(というか小説自体あまり読まない)エッセイやこういう傾向の本が好きな人は少数派で、さしずめ村上主義者メンシェビキ(ロシア語で少数派の意味)なのかなあと、くだらないことを考えてしまいました。
ライバルについて
村上さんにとって、最大のライバルは過去の自分自身、とのことです。大事なのは、過去の自分を乗り越えていくということ。かつての自分を更新し、ヴァージョン・アップしていくこと。p179
(いいお言葉ですね。他人を気にしてもしょうがないし。自分も及ばずながらそういう心持ちで生きていきたいものです)
フィッツジェラルドの某長編小説の旧訳に出てきた「フランス大旅行団」という言葉。
原文ではなんと「Tour de France」
翻訳された当時の日本では自転車レースのツール・ド・フランスはあまり知られていなかったのではないか。
翻訳は時代とともに更新されるべき。p185
作家が亡くなった時の桜桃忌や河童忌
村上さんの忌はどんなのがいいか?
「大猫忌」みたいなのでいいのではないか。p191
陰謀論で語られることは本当か?
現実というものは無数の要素が寄り集まった、混沌としたもの。
そのような混沌を自分の力で支えきることのできない人たちが、「陰謀」というわかりやすいフレームを導入して、「これですっきりした」という気持ちになりたいのでは。p249