保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで

イメージ 1

保守主義とは何か
中公新書 2378
2016年7月15日 再版

イギリス首相のチャーチルの言葉
「二十歳のときにリベラルでないなら、情熱が足りない。四十歳のときに保守主義者でないなら、思慮が足りない」

「進歩」の理念に基づく進歩主義の旗色は悪く、逆説的に保守主義もまたその位置づけか揺らいでいる。
進歩主義と言うライバルを失った結果、保守主義もまた迷走している。

革命とは、全てを更地にして、その上に理想的な政治制度を、一から作り直そうとする試み。
しかしそのような急ごしらえの建物が堅固なものになるはずが無い。
むしろ、もともとあった美点すら失い、やがて全てが崩壊してしまうだろう。
このようなエドマンド・バークの予言は、ジャコバン派の恐怖政治とナポレオンの独裁によって実現する。
バークの保守主義
社会や政治の民主化を前提にしつつ、秩序ある漸進的な変革を目指すものだった。

アメリカは現代の先進国で例外的に「宗教的な」国家である。
アメリカでは90%を超える人々が神、または普遍的な霊魂の存在を信じている。
また宗教と関連して、現代アメリカの保守主義の精神的背景には「反知性主義」という要因がある。
これはアメリカ社会に根強い反エリート主義的な伝統

伝統的な政治体制が長く存続し、むしろその打倒が政治的近代化の課題となった国々-世界史の中では、こちらが一般的であり、むしろ英米の方が例外的かもしれないーでは、伝統を否認する政治的急進主義と、それに反発する勢力が衝突し、自由な秩序の確立に向けて漸進的改革を主張する保守主義が確立する余地は小さかった。

ヨーロッパに特徴的なのは統一性であり、キリスト教を中心にその一貫性は近代まで続く。
これに対し、日本における過去を振り返れば、端的にそこには歴史性が欠けていた。日本の近代で否定すべき神は無く、明治維新天皇制が持ち出されたのも、ある意味でその空虚さを埋めるものでしかなかった。と福田

ヨーロッパの思想は「正統」と異端との対決の歴史だった。
キリスト教には明確な「正統」があるからこそ、それに挑戦する「異端」も生まれる。

戦前の日本では、国家や国民を強調するナショナリズムや、過去に執着して改革を否定する伝統主義と区別される保守主義は、希薄であった。

現代の日本において保守主義の可能性があるとすれば、それは個人のエネルギーと結びつくときではないだろうか。
「自分の家族や仲間、地域コミュニティ、その歴史や文化、技能や伝承、さらに自然環境や景観」など、身の回りにある具体的な何かを守るとき、それはその人にとって使命感となり、存在証明につながる。