小説集 竹中半兵衛

イメージ 1
 
小説集 竹中半兵衛
2014年3月30日 発行
作品社 発行
 
大河ドラマ軍師官兵衛」において、一番魅力的なキャラクターはこの竹中半兵衛かなという気がします。
まだドラマでは放送されていませんが、官兵衛の息子を助ける場面とかはしびれますね。
そんな半兵衛を扱った作品を編集したのがこの本です。
作家は海音寺潮五郎津本陽、八尋舜右、谷口純、火坂雅志柴田錬三郎山田風太郎です。
史実に極力基づいた作品から、側面から描いた異色作までヴァラエティに富んでいます。
 
半兵衛には領土欲も権力欲も希薄だった。しかしその一方、自尊心が異常なばかりに強いのである。今風に言えば、精神のスタイリストとでもいおうか、人間社会の実利よりも美学のほうに重心が傾斜する。
 
長篠の合戦で、銃砲の威力を目の当たりにする半兵衛。
見送りに来た黒衣のバテレンが「信長様こそ、ヨーロッパ流の、科学的戦法で、この国を統一される、優れた大将」というのを耳にする。
この新しい兵器が、唐より伝えられた大和の風土の中で血肉化された古来の兵法を、たちまち駆逐することになるのだろうか、という複雑な思いにとらわれる半兵衛。
竹中半兵衛 生涯一軍師にて候 より)
 
(官兵衛の息子、松寿丸を助けるかどうか、蜂須賀彦右衛門と話し合っているときに)
いつか殿(秀吉)が「半兵衛に欲はないが、おれよりも野心家だよ」といわれたことがある。「欲のない野心家ほど怖いものはない」と。その意味が今、わかりました。
 
(半兵衛が病床で、自分と秀吉を比較しながら)
なにが清廉の士だ。無欲の人だ。おれには欲もあれば、野心もある。だがそれを強固な意志で抑制しているだけだ。
おれが秀吉に惹かれるのは自分の感情に正直だからなのかもしれない。
(わかれ 半兵衛と秀吉 より)