絵で見る十字軍物語

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絵で見る十字軍物語
ギュスターヴ・ドレ 絵
新潮社
2010年7月25日 発行
 
この本は、見開き二ページごとに、ギュスターヴ・ドレの挿絵、地図、そして簡略な解説、という形式で十字軍の歴史を紹介しています。
ドレの挿絵は、元は19世紀前半に書かれたフランソワ・ミショーによる「十字軍の歴史」という本のためのものです。
フランスの啓蒙時代からフランス革命の時代に生きた人の筆によるものゆえ、必ずしもキリスト教側のべったりの内容ではなく、ある程度の公平性は保たれているようです。
ドレは神曲の挿絵も描いていますが、モノクロにもかかわらず、というかモノクロだからかもしれませんが、迫力と静けさという相反するものが共存した挿絵になっており、とても美しいです。
この本では、ただ一箇所だけ、ドレの挿絵ではなく写真を使っているページがありました。その写真はフリードリッヒ二世の壊されかけた彫像です。フリードリッヒは十字軍の歴史(第六次十字軍)において、血を流した戦いではなく、外交によって三大聖地の獲得を成し遂げた人物です。
平和主義の立場から言うとすばらしいことだと思うのですが、ドレは挿絵を残していません。破門の身の皇帝で、イスラム教徒を殺さなかったフリードリッヒはその頃辺りまでのキリスト教徒には評判が悪かったらしいです。
残念なことですね。