ローマ人の物語Ⅹ すべての道はローマに通ず

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ローマ人の物語勝,垢戮討瞭擦魯蹇璽泙膨未
塩野七生 著
新潮社
2001年12月20日 発行

このローマ人の物語召蓮∈までの巻と異なった趣である。
というのも、今までは編年、あるいは皇帝ごと、にしていたのに対し、この巻では、「インフラ」に焦点をあわせて著述しているからである。
前書きでは、読むのが困難かもしれない、と断っておられた。
しかし読み進めてみると、これはこれでたいへん面白い。
今までの歴史の著述の中では、やれ街道を進んでいった、橋を渡った、風呂に入った、などなどあっても、話自体は面白いものの、その時代の一般的なことについてまだ慣れていないため、少し靄がかかっているような感じがした。
それが今回の巻のおかげで、あらためてその靄がどんどん晴れていくような気がして、また別の形でこの「ローマ人の物語」楽しませてもらった。

最初は「街道」からはじまる。
なんといっても、領土内に、血管の様に張り巡らされた街道、である。
血の巡りが悪いと、体に変調をきたすように、ローマ人も国家の発展・防衛のためには、街道の建設及びメンテナンスの必要性を強く感じていたようである。
まずは「アッピア街道」。
ぴたりと敷設された車道。最大の敵である水を除去する排水溝。そして歩道があり。その外に墓碑、そして並木がある。
並木が外にあるのは、その根が道路を浮かばせるような状態になるのを防ぐためである。
そういえば、よく歩道にある並木の根が、そのまわりの歩道の表面を浮かしてる状況を、今の日本でもよく見かける。

それにしてもこのアッピア街道、重要史跡になったのはつい最近のことであるため、第二次世界大戦後の環状道路のため、切られた状態になっている。
また最近でも、散策の場として整備された結果、子供の遊園地的に手を加えてしまったらしい。
わざわざそんなことをせずに、古のローマに想いを馳せたゲーテの時代の状態で置いてくれ、と訴えておられる。
その方が、単にいにしえに想いを馳せることができるだけでなく、メンテナンスの欠如が、組織(国や地方自治体)が機能しなく事であり、そして結果には個人個人にも影響を受ける、ということにも想いを馳せる事ができるからだ、とのことであった。

全くその通りだと思う。
古のローマ人の子孫と自称する現代のローマの皆様も、そういったところにも配慮して欲しいと思う。
もちろんローマ以外の、歴史ある場所に住む、全世界の皆様も。