回想のブイヤベース(マルセイユ旧港)

停電中の暗闇の中、我々よそ者は、黙々とオリーブをつまみながら、南仏マルセイユ滞在のための通過儀礼を行う。
我々の真摯なイニシエーションが功を奏したのだろう、幸いそんなに時間もかからず、停電は直り、無事チェックインすることが出来た。
ただ、上の階に行く時のエレベータに乗るのが少し不安になった。
閉じ込められる事もなく、無事に部屋に行けてほっとする。

部屋で一服した後、夕食を食べに行く。
マルセイユならやはりブイヤベースでしょうということになった。
幸い、この日はまだ我々の先発隊も疲れておらず、みんなでホテルを出て、旧港に向かう。
この周りの、庶民的なブイヤベースの店に入った。

ブイヤベースといえば、自分には忘れられない思い出がある。
初めてパリに行った時、初めてのちゃんとした食事がブイヤベースだったのだ。
その時に、自分の応対をして、そこに連れて行ってくれた人は、きれいな女性だった。
こちらは、パリにも全然慣れておらず、なおかつブイヤベースなどは全く見たこともない食べ物だった。
でもせっかくの機会なので、いろいろ喋らなければ・・・と頑張りつつ、食べていく。
とはいえブイヤベースだと、どうしても食べ跡が汚くなってしまう。それをカバーするのがたいへんだった・・・。
などと回想に浸りながら、本場のブイヤベースをかぶりつつ、ふけゆくマルセイユ旧港の夜だった。