パリの下宿の思い出③ 大家はオババ

大家さんは年配の女性で、あちこちにアパルトマンの部屋を持っていたようだった。自分の同僚も彼女の部屋を借りており、その大家をよく知っていたが、大きなめがねをかけ、がっしりした体型の彼女を「オババ」呼ばわりしていた(笑)
家賃の支払いは、毎月一回土曜の午前中に、大家自らわざわざ取りに来た。
フランスでは小切手社会なので、他の日本人同僚は小切手を郵送するだけで済ましている人もいたが、自分の場合は小切手+現金払いという形式だった。
理由についてはあえて聞かなかったが、おそらく所得税とかの税金対策だと思われる。小切手なら銀行を通してしまい、税務当局もその気になれば金額を把握できるが、現金はそういうわけにはいかない。
また、部屋に来る理由は、ちゃんときれいに部屋を使っているかという監視の意味もあったのだろうと思う。なにぶん日本人の野蛮なギャルソン?なので、大家の心配も尚更だったのだろう。
家賃の支払い以外で会うことはなかったが、一度だけバスルームに水漏れがしたときには呼ばざるを得なかった。
慌ててへたくそなフランス語でファックスを送る。幸い大家はヴァカンスに行く直前だったので来てもらうことができた。
大家はすぐにアパートの管理人を呼んできた。管理人にバスルームの裏側をごそごそしてもらう。幸い大げさな修繕や工事はいらず、ちゃんと直してもらった。
まあ大家さんにとってもこの部屋が、バスルームの湿気とかで荒れる恐れがあったわけで、下宿人の都合なんかよりも、自分の所有する部屋が無事でほっとした、のかもしれない。