ドストエフスキーとの59の旅

イメージ 1
 
ドストエフスキーとの59の旅
2010年6月21日 第1刷
 
 
「2008年10月、モスクワ、ロシア国立外国文献図書館」などという時と場所だけの表題のもと、著者の人生における59の場面を、ドストエフスキーを絡ませながら回想する。著者の外面の行動、そして内面の思索にドストエフスキーがまとわりついてくる。
自分はドストエフスキーの作品はまったく読んだことはないのだが(村上春樹さんのQ&A本でよく取り扱っていたのを読んだくらい)、それでも興味深く読むことができる。
 
2008年にクレムリン宮殿にて、ロシア大統領から賞を貰う栄光によくした筆者。そのような晴れがましい席にもかかわらず、約25年ほど前に、ソ連国内でスパイの嫌疑をかけられ、取調べを受けた恐怖の記憶を思い起こす。
 
2001年9月11日、BBCプロムスの野外コンサートに行く途中、ロンドンの地下鉄でただならない雰囲気を感じた筆者。タブロイド版を買い、恐怖の事件を確認する。コンサートの曲目には予定になかったベートーヴェンの葬送行進曲が付け足される。世界の終わりを実感する筆者。
 
ドストエフスキーが好んだドレスデン。ここの美術館に所蔵されているラファエッロ作の「サン・シストの聖母」。はだしの聖母マリアが、緑のカーテンの向こうから現れてくる。ドストエフスキーの作品「白痴」の中に、明らかにこの絵画をモチーフにした場面が出てくる。