ローマ亡き後の地中海世界 上(第一章)

ローマ亡き後の地中海世界 上
新潮社
2008年12月20日 発行
 
人間ならば願うことというのは、正直に働けば報酬が入り、努力を支援する神々への信心であり、持っている資産を誰にも奪われないですむという安心感であり、一人ひとりの身の安全であった。
海賊というものは、そのようなものに対しての、一つの障害である。海賊といっても、いわゆる非公認のものと、公認されたものがあった。単なる犯罪と、大義名分のある犯罪となるが、どちらにしろ、秩序が崩壊した時の悲劇である。
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紀元565年ユスティニアヌス帝が亡くなってから三年後、イタリア半島にロンゴバルト族が南下、そして570年には、メッカでマホメッドが誕生する。そしてサラセンと呼ばれるイスラム勢力は、大幅に勢力を伸ばし、北アフリカ地中海沿岸も支配する。そこで海賊行為を働き、イタリア沿岸の人々を拉致して、奴隷などとして利用する。
紀元800年、神聖ローマ帝国の誕生により、沿岸の安全も守られたが、シャルル・マーニュの死により、再び戦乱の地に戻ってしまう。
イタリアの修道院やさらには法王のいるローマまで、海賊の手は伸びてくる。そしてシチリアにまで手を伸ばし、シラクサも落城したことにより、ついにこの島もイスラム勢力の手に落ちる。