ローマ亡き後の地中海世界 上 ある種の共生

第1章の壮絶な戦いの模様が終わった後、「間奏曲」(インテルメッツォ)として「ある種の共生」という章のようなものがある。
この「間奏曲」というのがクールでいいですね。
ここでは、シチリアでの、共生の在り方が語られる。戦いだけではなく、キリスト教イスラム教がそれなりに共存していたのである。
9世紀ごろのシチリア、被支配者のキリスト教徒は税金さえ払えば、いくらかの不自由はあったといえ、第二級の市民として安全と自由は保障され生きていくことができた。
そして支配者のイスラムにより自作農制度や流通が発達する。そしてアラビア数字に代表される当時のイスラムの進んだ文化が流入した。
1072年、ノルマン人の征服によりアラブ・イスラム支配は終わりを告げる。そしてキリスト教徒は二級市民の身分から解放されたが、イスラムは引き続き残り、共生社会が「より」理想に近づいた形で現実化されることとなった。
しかし400年くらい続いた共生社会も、スペイン系のアラゴン王家の支配により、完全にキリスト教化され、地中海世界の一大トレードセンターとしての地位は終わりを告げた。