須賀敦子のフランス⑥アルザスの曲がりくねった道

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須賀敦子の、フランスでの足跡を巡る旅は、アルザスで終わりを告げる。
彼女はコルマールに滞在しウンターリンデン美術館や、サント・オディール山、そして小さな村々を訪問している。
いづれも、未定稿「アルザスの曲がりくねった道」の取材のためだった。
著者の稲葉ご夫妻も、その跡を追ってコルマール、キンツァイムなどの小さな村を訪れている。
村のはずれの小さな墓地。
その向こうには、見渡す限りのぶどう畑が丘の果てまで続いていた。
アルザスの曲がりくねった道。
ここで稲葉氏は、夏のはじめのシャルトルを思い出す。
麦畑の向こうには、シャルトルの大聖堂が待ってくれていた。
ここアルザスのぶどう畑の曲がりくねった道の向こうには、大聖堂はなかった。
ぶどうの棚以外には何もない畑の中を、道はうねってどこまでも続いていた。
須賀もこのような曲がりくねってひたすら続く道を、歩いて、登って、下って、同じ歩調でどこまでも進んでいこうとしたのだろうか・・・。

稲葉ご夫妻は、ワイン街道を北へ走っていく。
小さな村々を抜けて、聖女オディールの伝説が残るサント・オディール山の僧院にも立ち寄っていた。
この本の最後の写真は、青い空の中、アルザスを見つめ続ける聖女オディールの姿、だった。

(写真はサント・オディール山の僧院から見た眺望です。)