第四の大陸 人類と世界地図の二千年史 第1部 旧j世界

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第四の大陸
人類と世界地図の二千年史
トビー・レスター 著
小林 力 訳
中央公論新社
2015年8月7日 初版発行


1507年、アルザス・ロレーヌにまたがるヴォージュ山地のほとりで作成された「ヴァルトゼーミュラー世界図」
この地図の製作に関わる興味深いミクロな歴史と、その地図作製を可能にした思想、発見、そして社会力学の集合をめぐるマクロな歴史が述べられていきます。
そして古代から中世、そしてルネサンス期における航海や探検、地理学者や思想家、有名人から忘れられた人々まで様々な事件と人物が生き生きと描かれます。

プロローグ
「天地学入門」と題する本の説明。マクシミリアン一世に献上。
1901年、その本に述べられていた地図発見。

第1部 旧世界
第1章 マシューの地図
1200年代初頭 ベネディクト会修道院セント・オールバンズ
ロンドンから馬で1日の距離にある修道院にいたマシュー・パリス。年代記作者。
「大年代記」で名声を得る。
本を一冊つくるのに、羊皮紙のために羊の群れ全部の皮を使わなければならない。 
地理の知識を取り入れるため、七世紀にセビリアの聖イシドールスによって書かれた「語源」と五世紀にローマのマクロビウスが書いた「注釈・スキピオの夢」
当時の世界の概念を示した「TO図」 
マシューが描いた巡礼者用の旅程図。その間は1日の旅程journee(journeyの語源)分だけ離れていた。

第2章 神の天罰
1238年、マシューは最初、何かがおかしいと書いた。
それはタルタル人の来襲。ユリアヌスというハンガリー人修道士の報告。
プレスター・ジョンという、東の彼方に住むキリスト教の王の伝説。
1245年のローマ教皇インノケンティウス四世によるリヨン公会議で、モンゴル人に対する使節団派遣を決定。中世ヨーロッパ人によるアジアへの探検。
大王を探すためロシア方面に派遣されたブラノ・カルビニのヨハンネス。六十代で肥満体の僧に課された重責。
リヨンからキエフ、そしてバトゥの帝国首都へ。
そして現代のカザフスタンを端から端まで横断し、アルタイ山脈を越え、モンゴルの地に奥深く入る。
このヨハンネス修道士の報告は、広く読まれるようになる。
1253年、フランシスコ会修道士、ウィリアム・ルブルックによるモンゴルへの初の本格的布教活動。

第3章 世界を記述する
マルコ・ポーロ旅行記
彼の旅行記は大部分はてて徹底的に主観を交えない調査記録だった。
カタイ(中国の古名)とマンジ(中国南部)を離れてから最初に記述するのはチパング、つまり日本である。

第4章 大洋の向こう
サー・ジョン・マンデヴィルと自称する著者による「マンデヴィル東方旅行記」という十四世紀の本
スタートはセント・オールバンズで、それからどんどん東へ行く。最後はアジアの端の地上の楽園に触れて終わる。
また別の箇所では大地が丸いことを示す奇談も書いている。

アイルランドの西海岸で過ごしたことがある者なら、何が起こるか誰でも知っている。雨と霧が数日間続き、肌寒くどんよりとした空気が広がる。島が本当に地球の末端にあることを思わせるものだ。しかし何の前触れもなく空は晴れ、このとき息を飲むような光景が現れる。魂を満足させる瑠璃色の広大な海、その外側にエメラルドグリーンに光る島々が浮かび上がる。
そうした瞬間こそ、初期のアイルランドの僧たちをして大海に向かわせたものだった。p112-113

8世紀、アイルランドの無名の僧が、今日「聖ブレンダンの航海」として知られる書物を著した。
その一冊に書かれた島々も遅くとも十二世紀には聖ブレンダン島として世界地図に入りはじめた。
また、十三世紀頃から、海図がヨーロッパで出回り始めた。

初めての航海用航海用コンパスがいつどこで作られたかは明らかでない。中国とヨーロッパは、それぞれ自分のところで発明されたと主張している。
ヨーロッパでは1187年、セント・オールバンズのアレクサンダー・ネッカムが「船乗りは、太陽が見えない曇った日、あるいは夜間の暗闇の中にいると自分が進むべき先が分からなくなる。そこで針を磁石でこすると、針は回転するようになり、止まると北を指し示す」と記録している。p119

第5章 見ることは信じること
海図とマッパ・ムンディとを取り入れた地図に、極東に関する情報を投影することで、作られたカタルーニャ地図。それにより十四世紀末におけるヨーロッパ人の地理学上の知識と思想のありようを豊富なイラストで知ることができる。

イギリス人のフランシスコ会士、ロジャー・ベーコン
世界を理解することは宇宙を理解すること。そしてそれはアリストテレスに目を向けることを意味する。

ベーコンが探していた情報は古代の地理学書の中にあった。そしてそれはプトレマイオスによるものだった。