最後のソ連世代 ブレジネフからペレストロイカまで 第5・6章

第5章 想像の西側  後期社会主義のヴニェ空間

ソ連の特異な概念ザクラニーツァ
国境や現実の領土ではなく想像の空間
現実味があるのに抽象的
よく知っているのに手が届かず
日常的でありながらエキゾチック
ここでもありあちらでもある空間

外国のラジオは反ソ宣伝とみなされソ連当局から「電波妨害」されていた、という見方。
しかし一方で、遠くの放送局を聞くことは世界を知る方法であり、教養豊かな個人や国際人の育成を重視する国のレトリックとも合致する。
実際に電波妨害したのは、当局が「反ソ的」とみなした放送局と番組だけ。
後期ソ連時代に短波ラジオは文化育成の強力な手段となり、想像の西側というソ連的な現象を作り出すのに貢献した。

オープンリール式のテープレコーダーで広まる西側のジャズやロック

若いロックファンが、1960年代から70年代の英米ロックに熱中するだけでなく、クラシック音楽のバッハのオルガン曲にも関心を持っていた。
バッハのオルガン曲は、その純ヨーロッパの宗教的な響きの故に、想像の西側の一要素として西側ロックと同じ重みをもっていた。
これは音楽の基礎であり、ここから複雑なシンセサイザーの曲を作り出したのが70年代の数々のロック・バンドだった。p259

70年代・80年代の若者の部屋
外国タバコの空き箱のコレクション。短波ラジオ、テープレコーダー、レコードや録音テープのコレクション、そしてジーンズをはいている。
(外国タバコはともかく、あとは日本の当時の若者と同じように感じる)

第6章 色とりどりの共産主義  キング・クリムゾン、ディープ・パープル、ピンク・フロイド

この章では、コムソモールの活動家で、レニングラードヤクーツクに住み、共産主義の理想に燃えてコムソモールの活動に積極的に参加することと西側ロックとの熱中を両立させている若者が主人公となる。

当時の若者を刺激したロック
その多くはアート・ロック、プログレッシブ・ロックハード・ロックといった種類
複雑で多彩な音楽。70年代の英国ロックは、大部分がヴニェの想像力を作り出す材料として最適だった。
そして、こうしたバンドの音楽は、後期ソ連の文脈であるものと共鳴した。
未来志向のアヴァンギャルドな実験精神ーかつては革命文化の一部で、後期ソ連期でもまだかなり重要なものであり続けた美意識である。p332-333