坂本龍馬の正体

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坂本龍馬の正体
加来耕三 著
講談社+α文庫
2017年9月20日 第1刷発行

坂本龍馬が成し遂げたこととして、「薩長同盟を仲介したこと」「大政奉還を献策」の二つがあげられる。
しかし近年の歴史研究において、薩長同盟中岡慎太郎小松帯刀などの力の方が大きい。
また「船中八策」や「新政府綱令」、すなわち、平和的大政奉還とそれによる国家運営のプランは、幕臣大久保忠寛が初出で、松平春嶽佐久間象山勝海舟横井小楠などから教わったものだった。
坂本龍馬は伝えられている半分も達成できなかったのではないか。
しかし、坂本龍馬はそれだけの人物ではない。
彼が本当に目指したものは、薩長同盟中心の新政府でもなく、徳川家=旧幕府を中心とした公武合体の政府とも異なった、第三の極、つまり中小藩や庶民の意思を代弁する、例えて言えば私設海上藩のようなものではなかったか。

坂本龍馬についての出鱈目の根源は坂崎紫瀾・作による「汗血千里駒」ではないか。
背中の馬のごとき毛、十代でも寝小便、寺子屋を1日で退学、井口村事件、などなどというフィクションが、この作品から創作された。

坂本龍馬の生涯を貫いた思潮、目指した未来は、明らかにわが国の西洋流砲術の発展(海軍を含む)とともにあった。否、その延長線にこそ存在した。一介の剣術使いのレベルでは、そもそもなかったのである。p106

坂本龍馬の心中には、ナポレオンへの思いがあったのではないか。
龍馬の立ち姿、高机に片肘をついて、遠くを見るような独特のポーズは、きりっと姿勢を正したナポレオンに酷似していないだろうか。
また坂本龍馬が入門した佐久間象山は、ナポレオンを心底敬慕していた。