ローマ バロックの劇場都市

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建築巡礼26
ローマ バロックの劇場都市
長尾重武 著
丸善㈱会社 発行
平成5年7月31日 発行
 
楕円はバロックのシンボルとして、ルネッサンスの円にとってかわる。
バロックの語源はゆがんだ真珠という。
楕円はゆがんだ円であることによって不確かさ、多義性、曖昧さのシンボルとなる。
 
1585年に法王に即位したシクストゥス5世。
建築家ドメニコ・フォンターナとともに16世紀終わりのローマの都市計画の壮挙を成し遂げる。フェリーチェ水道やサン・ピエトロ大聖堂オベリスクなど。
シクストゥス5世のローマ経営は
① キリスト教のモニュメントをむすぶネットワークを構築するという、カトリックキリスト教の中心都市ローマの神聖な野望に基づく
② 丘の地区の郊外のような場所を自然の豊かな場所として開発
③ オベリスクや古代彫刻、丘への水道の設置などの技術および組織力の向上
という特質がある。
 
ピエトロ・ダ・コルトーナによる聖堂の実験
サンタ・マリア・デラ・パーチェ聖堂は、ローマ旧市街の入り組んだ路地の中にあった。それゆえ、規則的な広場などは造れなかった。
そこで、劇場の経験を都市計画に応用する。つまり、ファサード前をわずかに広げて一つの劇場を造り上げる。
聖堂の側を舞台、広場を観覧席、周囲の家々をボックスとする。
ファサード上部の凸面。そして両側の翼部が凸面になっている。
 
カルロ・ライナルディによるトリック
ポポロ広場に立つ二つの双子のような聖堂。
もしそのまま同じ形式の建物を建れば、辺の長さで左側が小さくなる。
よって一方を円堂として、他方を楕円形として、同じ見つけ幅を取れるようにした。
楕円が登場するのがバロックらしい。
またそこまで固執した点に、この時代の都市のイメージが集約的に表れている。