ヨーロッパ広場紀行 中世・夢空間への旅

ヨーロッパ広場紀行 中世・夢空間への旅 表紙

 

建築探訪1 ヨーロッパ広場紀行 中世・夢空間の旅
安藤直見 著
丸善 発行
平成9年8月20日 発行

はじめに 中世という時代
中世とよばれる時代は、西ローマ帝国が崩壊した時から、ルネサンスが始まった15世紀までのミレニアム(およそ1000年間)にあたる。本書が話題とする西欧の広場は、その中世を背景として形成された空間。p4

西欧の広場は、かつてキリスト教と異教との併存の下で、小都市国家がバラバラに存在した1000年の歴史が形成した、それぞれに個性的な夢の空間であったのではなかったかと思う。p9-10

 

1 中世の広場
西欧の街路の景観を単純化してみると、壁が多いという傾向が見られる。つまり両側を壁で囲まれ、その壁に窓などの開口が穿たれた形態が多い。

フィレンツェのシニョリーア広場 大通り型
パドヴァのフルッティ&エルベ広場 細街路型と広場連続型
ピストイアのドゥオモ広場 広場演出型
シエナのカンポ広場 広場開放型と短街路型

広場との結びつきを考慮すると、街路を含めた広場は、それぞれに固有の都市形態を形成している。

道幅が狭く、壁の高い街路を通って、ポッカリと広い広場に出る体験は、とにかく西欧的である。p30

 

広場という空間は、刑務所のように閉ざされた空間ではなく、無数の窓や入口といった開口に囲まれた、閉鎖的であると同時に開放的な、まるで劇場のような空間だと思える。p31

広場を囲む壁面には、かなり単調な長い壁面をもつものもあるし、小さな広場の中に高い塔が建っていたり、大きなドームをもつ建物が建っているものもある。つまり広場のスカイラインの変化は複雑でおもしろい造形になっている
。そんなスカイラインの変化によっても、広場には適度な閉鎖感と開放感のバランスが演出されているように思う。p32

 

2 遥かなる廃虚 
エジプト時代以降のおよそ4000年の間の三つの大きな変革
・1000年続く中世の開始点となった西ローマ帝国の崩壊(五世紀)
・中世に終わりを告げたルネサンス(十五世紀)
・現代に機械文明をもたらした産業革命(十八世紀)p66

ローマ時代以前のギリシャ劇場とローマ劇場の違い
ギリシャ劇場では観客席が扇形に広がっている。
ローマ劇場では観客席が舞台を取り囲んでいる。
ギリシャ時代には神話的でヴァーチャルだった神々の戯れが、
ローマ時代にはリアルな人間の活動に変化したのか?p67

3 天球の建築
ローマのパンテオン/ロトンダ広場
イスタンブールのハギア・ソフィア
ヴェネツィアサン・マルコ広場
ローマのサン・ピエトロ広場
ナポリのプレシビート広場

4 丘上の都市国家
アッシジコムーネ広場
スポレートのドゥオモ広場
オルヴィエートのドゥオモ広場

5 塔のある風景
塔の広場/サン・ジミニアーノのチステルナ広場
ヴェローナのエルベ広場、シニョーリ広場
ゴシックの広場/ノートル=ダム広場、英雄広場 
イタリアン・ゴシックの広場/サンタ・クローチェ広場、ドゥオモ広場

6 閉鎖空間の美学
サン・マルコ修道院
中世とは物理的な広がりではなく、精神的な空間の広がりを求め続けた平和な時代だったのかもしれない。
修道院建築の特徴は、外部に面する窓はごく限られたもので、主要な部屋が中庭に面してつくられているという点である。p100

アルハンブラ宮殿
マドリッドサラマンカのマヨール広場
柱廊の広場/リベルタ広場、ソルデッロ広場
ロマンティック街道/ラトウズ広場、マルクト広場
花の広場/グラン・プラス