神殿から追放されるヘリオドロス(ヘリオドロスの間、ラファエッロの間)

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次にラファエッロの間の第二室「ヘリオドロスの間」に入ります。
まず画像の絵画は「神殿から追放されるヘリオドロス」です。
この絵画が描かれはじめた1511年頃、教皇ユリウス2世はフランスと皇帝軍の連合軍にとの戦いや、枢機卿内での権力闘争における攻撃にさらされていました。
そんな中、自分の精神を鼓舞し、また周囲にも教皇の権威を示すような作品を残す必要があったものと思われます。
そこで教皇はラファエッロに、この部屋においては、絶体絶命でも神がいかに民を助けるか、というテーマで絵画作成を依頼しました。
教皇も癖のある芸術家では、教皇の権威付けのようなテーマでは依頼しにくかったと思います。自分の意図と違ったものになってしまうかも、またへそを曲げてしまうかもしれないし・・・などなど考えたかもしれません。
それに比べてラファエッロのように性格的に穏やかで従順な芸術家だと、芸術的クオリティも高く、なおかつ忠実にコンセプトに沿ったものを完成してくれるだろうと、全幅の信頼をおくことができたようです。
 
ラファエッロが選んだであろう題材は、この部屋の4面の内、3面は過去の教皇や聖ペテロの奇跡など、キリスト教のエピソードですが、この「神殿から追放されるヘリオドロス」のみは、旧約聖書に基づいた題材です。
エルサレムの神殿から財宝を盗もうとしたヘリオドロスに対し、美青年や騎士が現れて、ヘリオドロスを打ち倒しています。
そして左側の輿に乗って、威風堂々とこの現場を見据えている人物は、ユリウス2世となっています。
この作品のひとつの魅力は、その左側の「静」と右側の演劇的な「動」の対称なのです。
しかしこのときは右側の壁面が修復中なため、美青年や騎士では見えるのですが、やっつけられているヘリオドロスたちが白い布で隠されているのが残念でした。