ラファエロ ルネサンスの天才芸術家 第2章

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ヘリオドロスの追放」における教皇ラファエロ

第2章 教皇居室の装飾
変化する制作スタイル

「署名の間」は教皇の蔵書室として使われていた。
書物の4つの分類、神学、哲学、詩学、法学に呼応する、四つの主題が天井と壁画に描かれている。

アテネの学堂(署名の間)
奥の空間では、プラトンアリストテレスという二人の哲学者を中心に、左右の人物が並んでいるが、各人の頭の高さはほぼ揃えられ、見事な水平線を描いている。p83

ヘリオドロスの追放(ヘリオドロスの間)
激しい動きに満ちた、勢いのある表現
色彩に関しては、暗色が用いられ、明暗のコントラストの差が強められている。

ボルゴの火災(火災の間)
内部の空間的な広がりよりも、群像の演じる逃走劇に目が引き付けられる。

ラファエロは大規模な壁画を装飾するにあたり、当初は均衡・調和のとれた構図を用いていたが、次第にそれを脱し、色彩や人物構成の面で、より大胆で劇的な構図を、入念に工夫し作り上げていったのである。

ラファエロの工房のメンバー
・ジュリオ・ロマーノ
名実ともに弟子のトップ
・ジョヴァン・フランチェスコ・ペンニ
とくに素描を準備する役
・ジョヴァンニ・ダ・ウディネーゼ
動植物を描く専門家

ヘリオドロスの追放」でユリウス2世の輿を担ぐ青年もラファエロの自画像?
教皇の左手の人差し指が下に向けられ、この人物の存在をそれとなく示しているように見える。p94

ライモンディの描くラファエロの銅版画
その姿は、自身で絵筆を手にして作品を描くよりも、むしろアイディアを練り、監督者という立場から弟子たちに描かれる、ラファエロの後期の制作プロセスをまさに反映しているといえる。p95

ラファエロの変化のプロセスを、教皇居室の装飾、そして自画像の変遷からたどることができる。
控えめで柔和な面持ちの若い画家は、多くの仕事と弟子に囲まれ、重責に誇りと苦悩を秘めた、孤高の芸術家、そして監督者へと変貌を遂げていくのである。