マティスの極私的魅力について

美の20世紀⑤ マティス
2007年1月31日 初版発行
著者 パトリック・ベイド
監訳者 山梨俊夫
訳者 林 寿美
発行所 株式会社二玄社
 
現代絵画の苦手な自分でも、なぜかマティスは結構好きです。
その中でも「ピアノ・レッスン」が一番好きです。
その特徴を箇条書きにしてみると、
 
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左上に重苦しくのしかかる窓
それと対称的に右下に作品のテーマである、安定したピアノ、そしてレッスンする人の丸い顔。重圧的な窓との対称の妙
斜めに統一して流れるカーテン、メトロノーム、ピアノの左側、そしてレッスンする人の左顔。絵画の中の新たなる方向性
レッスンするひとの右半分にはすました顔、左半分には斜線。造形の妙。
左上と右下の配置を補う右上の座っている人と左下の裸像。目立たないながら絵画を支えている。
 
またマティスの作品全体の特徴を書いてみると
 
遠近法を無視したべちゃっとした平面的な画
一面を同一色で。そして補色による対比
すました無表情な顔
室内の人物と窓からの遠景
緑の中にうごめく赤っぽい人物
派手な色使い、掟破りの色使い
対象の退行化。人間を単純化・漫画化して色や配置で個性を表現。それらにより現代芸術へ
 
自分の好みでは、彼のごちゃごちゃした絵よりも、上記の「ピアノ・レッスン」や「音楽」などの単純で、バランスがとれて、なおかつ顔や胴体がぎこちなくて面白い(笑)点がいいと感じる。
それにあてはまる「ボール・ゲーム」と、「ダンスⅡ」「音楽」を並べてみます。
緑系統の背景の中で、古典絵画から比べるとあたかも退化したような人物像がバランスよくおさまっているのが、なんとなく心に微笑みと安らぎを覚えます。
なお「ダンス」もさまざまな前段階がありますね。その軌跡をたどってみるのも面白そうです。
 
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