20世紀美術 マチスを回顧する など

20世紀美術
1994年5月20日 第1刷発行
 
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マチスの「ピアノのレッスン」
全体の半ば以上をおおったグレー・トーンが色を感じさせる。
色だけでなく形の省略の仕方、単純にするやり方が心憎い。
マチスの絵にはごちゃごちゃして整理に失敗したという絵も少なくないが、これほど見事に決まったほとんど完璧といえるバランスを保持している絵は無いのではないか。
 
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マチスの「音楽」
ダンスⅡと一対として飾られることが決まっていた。
しかし、サロンではそのあまりに単純化された形と色に批判が集中した。
1910年という年代を考えれば、これらの絵がどれほど絵画の常識を逸脱したものであったかが想像され、絵画表現の革新者としてのマチスの颯爽たる姿が想像される。
赤い五体ずつの人間のフォルムがダンスⅡでは動的に、音楽では静的に、抽象的な形式へと表現が変容するのに抵抗しているのである。
 
著者と同世代でニューヨークで成功した河原温
彼は「不在」をテーマとした。そしてこのモチーフをいかに徹底させるかに賭けるような生活スタイルを彼はとった。
オリジナリティが問われる絵画で、すべての辺境は探索されて、モチーフは品切れ状態になる。アメリカ現代美術の最後のモチーフは、「品切れ」を「不在」として表現することだ、と考えた。
そして70年代に入って、毎日起床時間だけを書いた「不在証明」の絵葉書を送ってくるようになった。
彼の成功を見て、彼が忍耐強い戦略家なら、自分もまた戦略家として、今世紀の還元的銃熱を、もう一度、人間的に総合するような新たな美術の流れを作ろう、と誓う著者。