ハンニバルの象使い

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ハンニバルの象使い
ハンス・バウマン
大塚勇三 訳
1967年5月8日 第2刷発行
岩波書店

この本は、武将ハンニバルのアルプス越え前後の出来事を、それに随行した象使いの少年の目を通して描いたものです。
これも子供向けの図書なのですが、史実を元にして、足りないところは説得力を持った想像で書いているため、結構リアリティがあります。
とくに象の生態については、なにぶん象使いが語り手という設定ですから、詳しく書かれています。
ローヌ河を渡る場面やアルプス越え、そして敵軍に対する象の群衆心理などなどです。
カルタゴ軍が、象を利用して戦争をしたといわれても、いまひとつ実感がわかなかったのですが、この本のおかげでその状況が理解できました。
ついでにつまらないことですが、象へのご褒美として、塩の塊を食べさせるという場面がよく出てきました。
そんなに塩分を摂取して、象は高血圧にならないのかなあと、子供が思いつかないことを心配してしまいました。
さすが大きな子供?である自分は視点が変ですね(笑)。

主人公は象と象使いの少年と言っていいのですが、当然のことながらハンニバル自身も登場してきます。
前半では傭兵の集まりの軍団を取りまとめる魅力的で有能なリーダーという面が強く取り上げられています。
しかし後半では彼の冷酷で好戦的な面など、マイナスイメージをもたらすようなところも取り上げています。
それにより、アルプス越えという英雄的な事業だけでなく、ちゃんと戦争の残酷さやむなしさをも強調するように配慮していました。