中央アジア踏査記

 
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オーレル・スタイン 著
澤崎順之助 訳
長澤和俊 協力
1984年10月15日 発行
 
著者はブタペスト生まれで、イギリスに留学後、インドのイギリス政府の公職に就く。20世紀初頭の敦煌楼蘭など、現在の中央アジア諸国、新疆ウイグル自治区甘粛省青海省あたりを何度も訪れる。
当時はインドの地理探索隊も同行することがあった。
 
シナの高仙芝将軍が、ダルコット峠とパミール高原を越えたことは、ハンニバルやナポレオンのアルプス越えをしのぐと考えられる。彼の記念碑がないのを残念に思う筆者。
 
砂漠の中。不毛地帯で交通の難所。そのようなところにかすかに残る駐屯地というか、小さな役所を発掘する。砂のほんの下や、ゴミ捨て場のようなところに2000年ほど前の、漢の時代のものが残っている。木簡に書かれた漢字から、その文書の内容から、その地の役割をうかがい知る。
そして通信用の木簡文書の印影にギリシャ・ローマ美術の影響下にあるヘラクレスやローマの守護神の面影を見たときの心の躍りよう。
 
冬の砂漠。水も食料もないところに、らくだを利用して移動する。水は氷の状態でらくだに担がせて確保する。
 
古い寺院あとで発見した巻物。持ち帰るため、そこを管理している僧侶との巧みな駆け引き。寺に喜捨する銀貨の力や、相手が渡してもよさそうに思っているものをかぎわけ、無事持ち出すことができる。文化略奪なのか文化保存なのか。
 
82歳の時、現在のペシャワールからカブールに着いたときに、風邪をこじらせて急逝する。その歳まで旅に生きることができたとは、うらやましく感じる。(芭蕉の句「旅に病んで 夢は枯 野を かけ廻る」を思い出す。)
 
(写真は本に添付されていた地図です。ちょうど本を読みながら広げ眺めるようにできていたので便利でした。)