チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷

イメージ 1

チェーザレ・ボルジア
あるいは優雅なる冷酷
塩野七生 著
新潮文庫
平成19年3月20日 50刷

この物語の出だしは、1492年夏のカンポ広場から始まる。
まだ16歳のチェーザレ・ボルジアが、パーリオ(競馬)の練習をしているところからだった。
そこで、父が、コンクラーベで法王に選ばれたとの知らせを受ける。
本来、聖職者に子供はあってはならないのだが、教会権力と現世権力が混在していた当時、そういうのも黙認されていたようだ。
父の力で、自分も人も羨む枢機卿となるチェーザレ
しかし、彼の野望は、それでは満足できなかった。
国家の君主になると言う野望。
それはすなわち周辺を強国から狙われている、イタリアというものの確立でもあった。
自分の野望遂行のために、己の力量を発揮し、策略を巡らし、時が来るのをじっと待つ。
そんな男に絡んでくる、マキアヴェッリや、みんな知ってる謎の老人。
マキアヴェッリチェーザレの名を、「君主論」の中で讃え、後世に残した。
万能の天才である謎の老人は、チェーザレがうち立てようとする国のインフラ整備の任を負わされた。
チェーザレは、領主の反乱を見事な策略で抑え、彼の名は畏怖と共に欧州中に知れ渡る。

しかし、そんな中、父の死。
さらに悪い事に、自分も重病の身で、権勢はがたがたと音を崩れ、破滅へと向かう。
塩野先生は、その過程を、深い愛情を秘めつつ、淡々と叙述していく。
沢木(深夜特急)耕太郎氏による解説もわかりやすい。