欧州の今 戦後70年 独主導のEU 慎重政策(読売新聞2015年8月18日朝刊より)

仏独の新任外交官合同研修がパリで実施
2010年から毎年交互に開催
仏独ともこういった合同研修は他国とは行っていない

欧州統合は仏独が二人三脚で主導
その関係は「不均衡の均衡」と呼ばれた
敗戦後
ドイツ(西独)は経済・金融でフランスに勝り
フランスは政治・安保でドイツに勝る
しかし1989年の「ベルリンの壁」崩壊・冷戦終結が転機となる

ミッテランはドイツの力の象徴であるマルクをた単一通貨ユーロに溶かし込み、薄めることで、ドイツの比重を減らそうとした
しかし結局、ユーロはマルク以上にドイツに都合のいい通貨になってしまった
マルクなら通貨切り上げを余儀なくされ、輸出競争力がそがれただろう
ユーロのおかげで、ドイツは今や世界一の貿易黒字国

近年、独仏を隔てたのは構造改革の有無
2003年頃から大胆な労働市場社会保障改革に着手した
フランスは手を打たなかった
仏独に2000年時点では大差はなかったが、今日、格差は鮮烈

フランスも構造改革の必要性は頭では理解しているが、財政赤字を抱えるフランスは高失業、低成長にあえいでいて、労働市場改革は無理

フランスはドイツの市場の捕らわれの身
国債金利はドイツ並みに低い。市場が独仏を政治的に一体と見なすから
独仏が政治的に対立すれば、市場は反応し、仏国債金利が上がり、債務危機に直面する

ドイツはナチスの失敗に懲りて、積極的な対外政策を展開しようとしない
EU諸国は伝統的に対外行動に積極的ではなく、ドイツになびく
不作為と言う支配が欧州を縛っている。

(もともと、政治はフランス、経済はドイツという感じだったのですが、経済的な格差があまりにも大きくなって、政治も含めドイツが大きくフランスに差をつけてしまったようです。自分がフランスにいた2000年頃には、そんなに大きな格差は感じなかったのですが、今ベストセラーになっているエマニュエル・トッドさんの著書にも見られるように、ドイツの力の増大、そしてフランスの凋落は大きな懸念材料になっているようです。ドイツは別に嫌いではないですが、したたかに政治力を見つける以前のフランスの姿が恋しくなってきます)